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【第5回】親から子へ、受け継がれた『ババール』

ところでこの『ババール』はたくさんのシリーズが出ていますが、

ジャン・ド・ブリュノフが世に出した作品は7作です。(生前に出版したのは5作)

 

2冊目の『Le Voyage de Babar』、日本語版『ババールのしんこんりょこう』では、

新婚旅行と聞いて想像するものとは程遠い波乱万丈な旅が待ち構えています。

 

しんこんりょこう

『ババールのしんこんりょこう』(ジャン・ド・ブリュノフ/作・絵 やがわすみこ/訳 評論社)

 

ジャン・ド・ブリュノフが書いたシリーズを見ていると、ババールの妻、セレスト(セレステ)との仲の良さ、

チームワークの良さを感じられ、

つくったゾウの王国の街の名前に妻セレストの名を使うところなどに作者自身も妻を大切に思っていたのではないかと感じました。

 

日本語版の4冊目『Babar en famille』、『ババールのこどもたち』は子育て中のみなさんにおすすめの1冊です。

 

絵から想像するほんわかした温かいストーリーだけでは終わらず、

ドキドキの連続で厳しい部分もあるのがババールの物語の魅力だと思います。

 

ババールのこどもたち

『ババールのこどもたち』(ジャン・ド・ブリュノフ/作・絵 やがわすみこ/訳 評論社)

 

作者のジャン・ド・ブリュノフはまだまだ若い37歳にして結核でこの世を去りました。

その後、長男である息子のロラン・ド ・ブリュノフがババールのお話を終わらせたくないと

その後のシリーズを引き継ぎ、今年で92歳の彼が長年に渡り書き続けています。

 

幼少期にお話を聞いていた息子の手によって息をし続けるババール。

これから先もずっと多くの人の心の中で生き続けるのだろうと思うとまるでそれこそが素敵な物語のようですね!

 

そんな背景のストーリーも、絵本の中の物語もドラマチックな『ババール』だからこそ、ずっと愛されているのでしょう。

 

若くして大切な家族を置いて亡くなった作者と残された家族に思いを馳せながらもう一度作品を読んでみると、さらに心に響くものがあります。

 

母が息子たちのために生み出し、父が膨らませて本にし、息子が受け継ぐ物語。

家族と親子の絆を感じる物語なので、ババールの家族も温かく、じんわり沁みていくお話になっているように思います。

 

福本舞衣子


著者プロフィール

福本舞衣子

家族とともに1歳でフランスに渡り、計約10年間、幼少期と10代をパリで過ごす。高校時代は、地元フランスの進学校のL文系へ進み、

フランス文学や詩について学ぶ。日本の大学でもフランス語を専攻。現在は日本在住。

著書に『星の王子さまが話してくれた世界一幸せになれる33の言葉』がある。

星の王子さまが話してくれた世界一幸せになれる33の言葉

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