第七回 『ちっちゃいさん』と日本の絵本

イソール作/宇野和美訳
1,500円(税・配送手数料別)

―スペイン語圏では、絵本は親子で読むものという意識がうすいまま絵本をつくっているというお話がありますが、

  イソールさんの絵本はどうでしょうか。

私は、イソールさんは子ども向けに描いていると思います。

描いているうちにこの本はこのくらいの子が楽しむかな、とわりと決まってくると話していました。

文章も子どもが分かるようによく工夫されています。

『ちっちゃいさん』も、決してお母さんが喜ぶように描いているのではありません。

 

―確かに、お母さんが主役ではないですね。

少し大きくなった子が読んだら、「自分はこんな風におっきくなったのか」、とうれしくなりそうです。

「ほら、ぼくにもレーダーあるよ」とか「うちの弟にもあるねサイレンが」、

と言って子どもが読んでくれるといいと、イソールさんも言っています。

 

―子どもたちに伝わるようにしているのですね。

そうですね。日本でも子どもにもっと読んでほしいな、と思っています。

 

―子どもの頃に読んでも、大人になってからも心に残っているような絵本ですよね。

保母さんやっている友達が5歳児に読んだらすごく喜んだ、と話してくれました。

保育園だと0歳も1歳もいるから、あ、あの子たちこんなだよね、みたいに思えるのでしょうね。

読み終わったら、すごいいたずらっ子がもっかい読んでって来た、と連絡をくれました。

保育園の子どもにも伝わる証拠ですね。

 

―イラストは、これはコラージュでしょうか。

デジタルメディアと言うんでしょうか、コラージュもあります。

『うるわしのグリセルダひめ』のときは、自宅の床をトレースして使ったページもあります。

版ずれみたいに見えるけど、色を輪郭通りに塗らないのも特徴的です。

お会いしたときは、おみやげに千代紙をもっていきました。こういうの大好きなの、と喜んで受け取ってくれました。

 

―イソールさんの新作はあるのでしょうか。

去年アルファベットの本が出ました。英語には翻訳されています。

Aで始まる言葉で絵がはじまって、俳句くらいの長さの文章が添えられています。

でもABCの絵本はほかにたくさんありますし、スペイン語の単語じゃ分からないし、難しいかな、と思っているところです。

 

―知名度も重要になりますよね。

今は、一点が集中的に売れる傾向が強いですね。

出たときに売れないと、埋もれてしまうし。『いっさいはん』(岩崎書店)という絵本が売れているみたいですね。

ああいう雰囲気のほうが、日本人のテイストには合うのかな。

『ちっちゃいさん』の視点はすばらしいと思うんですけどね。

 

―『いっさいはん』は絵本好きではない人も、手に取りそうですよね。

  一歳半が身近にいるとつい選んでしまうかもしれないですね。

『ちっちゃいさん』は出産のプレゼントにしてくださる方も多いです。

 

―当店でも、お客さんで「子育てのこと思い出したくて」と買って下さった男性がいらっしゃいました。

 この絵本には、母親だけじゃなく、年齢や性別の違う大人達が登場します。

 「赤ちゃん絵本は母親のもの」という概念がないところが、この絵本の魅力だと思います。

 

 

お父さんもお母さんも。お兄ちゃんもお姉ちゃんも。

それぞれの視点で楽しめる赤ちゃん絵本『ちっちゃいさん』は当店で販売中です。

 

お手元に一冊、いかがですか?

 

(おしまい)

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