―まーちゃんは、木の絵本も大好きですよね。
まーちゃん:『木は ぼくの ともだち』とか『おおきなきがほしい』とか
木に関するお気に入りの絵本はたくさんあります。
ママ:小学3年生の時に「樹木医になりたい」って言っていたんです。
当時は木の図鑑に夢中になっていましたね。
うちの庭に「ハクレンさん」と呼んでいる木があるんですが、あるクリスマスの時、
サンタさんに「いつも日影を作ったり鳥を休ませてくれてがんばっているハクレンさんに、
どうかプレゼントをあげてください。」って手紙を書いたこともあるんです。
まーちゃんの本棚。今も樹木図鑑が並んでいる。
―以前、Instagramで「ミカちゃん」という名の木の友達がいたというお話がありましたが、
それとは違うのですか?
まーちゃん:ミカちゃんは通学路にいるんです。どんぐりみたいな実がなる木です。
ママ:これはとても衝撃的でした。1年生の時「ママ、友達ができたよ、ついてきて!」と言われて、
ああよかった、できたんだー。と思ってついて行ったんです。
ミカちゃんはね、女の子なんだよ、と。うんうん、そうなんだね、と自転車に乗りながら。
でも、まーちゃんが「ミカちゃん!」という先には誰もいなくて。
「ミカちゃんです!」って木を指して紹介するんですね。
―1年生って、友達ができるか親にとっても不安ですよね。そこに木を紹介されると、
私も戸惑ってしまうかもしれません…
ママ:とにかく、「親としてのベストアンサーって?」とぐるぐる悩んだ末に
「いつもまーちゃんがお世話になってます」って頭を下げました。
――周囲と方向性が違うと親が不安を感じて周囲と馴染むよう促す場合もありますが、
お母さまはまーちゃんの考え、行動をそのまま受け入れていらっしゃったのですね。
私も、ミカちゃんに会ってみたいです。
まーちゃん:ミカちゃんのいる通学路は植え替えもあって新しくなったりするんですけど、
ミカちゃんはずっと同じ場所にいるので、私はすぐ見つけることができるんです。
ママ:帰り道、ミカちゃんはどういう役割をしているのかって私に話してくれるんです。
目の前に田んぼがあって、そこに住む妖精たちに「春だよ、オオイヌノフグリを咲かせておいで~」
って言うんだよって。
―日常と絵本の世界の境界線がなく、続いているのですね。
ママ:それこそ、3、4歳の頃から「シンデレラ、王子さまが待っているわよ!」
なんて言ってきたわけですから。物語の世界が日常に溶け込んでいたんでしょうね。
―でも、文章や、実際にお話ししても夢見がちな印象はありませんね。
むしろしっかりなさっている印象です。
ママ:どうなんでしょう。ただ、想像力が豊かなので、うんと助かっていることもあります。
相手の気持ちも推し量ることができる部分もあると思うんですよね。
感受性にもつながると思うのですが、いろんな立場に立って考えてあげられることができるのかもしれません。
―確かに、自分の視点以外の視点を知り、対人関係でも活かすことができるのも
読書の魅力の一つですよね。
ママ:そのせいか、相談を受けることもあるみたいで担任の先生や同級生からは
「ご意見番」とか「副担任」なんて例えられることもあるんです(笑)
―周囲から「変わっている」と敬遠されることはなかったのですか?
まーちゃん:あんまりそういうことを感じたことはなかったかもしれないです。
小さい頃から一緒にいた友達が多くて、その頃からずれていたので(笑)
私のことをそのまま受け入れてくれているという感覚です。
―小さい頃からずれていた、というのは具体的には?
まーちゃん:(第三回で触れた)ロッタちゃんの誕生日の歌とか。
あとは、職業体験で一人だけ裁判傍聴に行きたいって言ったりとか。
ママ:ほかの子達はコンビニや幼稚園など学校が用意した職場を選ぶんですけど、
彼女一人だけ「その他」枠で裁判所をリクエストしたんです。
たぶん『ハリー・ポッター』に出てくる裁判のシーンが印象的だったんでしょうね。
―周囲と異なることがあっても「それでいいよね」と互いが受け入れてくれる環境というのは、
素敵ですね。
ママ:お互いが「こうでしょ!」と価値観を押しつけ合うとダメになってしまうこともあると思うんですが、
そういったことがない環境にいたのはありがたいですね。
(つづく)
登場した絵本
『木は ぼくの ともだち』
作・絵/カルメ・ソレ
訳/おおわきみちこ
出版社/新世研
出版年/1992年 価格/1,523円
『おおきなきがほしい』
作/佐藤さとる
絵/村上勉
出版社/偕成社
出版年/1971年 価格/1,080円