第一回 「絵本部」から絵本作家へ

にこにこばぁ
えほんの杜/762円(税・配送手数料別)

―新井さんが初めて絵本を出したいと志したのはいつ頃でしょうか。

きっかけですか。小学生の中学年ごろから中学生くらいまでずっと児童文学が好きだったんですね。

特に、ムーミンが大好きで。その頃からうっすら絵本作家になりたいなぁ、と思っていました。

ゲーム会社に就職してデザイナーになってからも、ずっと心のどこかに「絵本作家になりたい」

という思いは消えなくて。だから、作ったんです。会社で「絵本部」を。

 

―それは、サークルみたいな感じで?

そう。部門じゃなくて、クラブ活動です。

絵本好きの仲間で絵本を作って、ボローニャ絵本原画展のコンペに出しました。

入賞者は海外で出版していることが多いんですよね。

 

―すごい、本格的ですね。

うん、それで絵本部からも二人ほど入選しまして、彼らを売りこむついでに自分も売りこめるかな、

と思って、「部長」として「うちの部員が入賞しまして」って言って一緒について行ったり

していました。そんな活動しているうちに、トーベ・ヤンソンさんが亡くなったんですね。

 

―ムーミンの原作者ですね。

彼女が亡くなったと知って、やっぱり本当にやりたかったのは、児童文学とか、絵本とか、

そういう世界だよなって強く思うようになって。

それで自分のビジュアルでゲーム一本作れたら辞めて作家になろうと思って。

で、辞めて絵本作家になったんです。

新井洋行さん

―トーベ・ヤンソンさんの世界に惹かれた理由というのはどんなところにあったのでしょうか。

理由、なんでだろう。

 

―はじめのきっかけは、アニメではなく本からだったのでしょうか。

当時はいろんなファンタジー作品が好きだったんですね。

で、ファンタジーってけっこう戦争とかになるじゃないですか、『指輪物語』とか、『ナルニア国物語』とか。

でもムーミンって、もうこどもたちが森のなかとかで自由に遊んでいて、

自分の中では理想の世界みたいなもので好きだった様な気がします。

 

―確かに、基本的に穏やかな世界観の中で、確かに癒されますよね。壮大な物語とかではなくて。

けっこう、みんな楽天家じゃないですか、キャラクターが。

ムーミンママとかすごいですよね。

 

―ムーミンはその、来る人来る人受け入れているじゃないですか、

何人ムーミンの家に住んでいるのかなって。そこがすごいなって思います。

彼らは、半ば災害とかも受け入れていますよね。楽しんじゃっているっていうか、

しょうがないわね、みたいな。強さですかね、強さとおおらかさ。

 

―確かにすごい。

作家になりたい人って、憧れの作家の世界観に似たものを自分なりの世界観にして、

作品として作り出したいなってあると思うんですけど。

僕も同じように、自分なりのムーミン谷みたいなのを作りたいなぁ、と。

具体的にではないですけど、自己表現の場として絵本を書いたり、

児童文学書いたりしたいなって思って、で。デビュー作品はファンタジー絵本だったんです、

でも、会社やめたタイミングで、こどもが生まれまして。

 

―お子さんが生まれた。

デビューから1,2年ほどでファンタジーの絵本出せたんですけど、

そのときに自分が表現したい物を作りたいっていう気持ちじゃなくなっていて。

自分のこどもが喜ぶものを作りたいってなったんですよ。

それがあかちゃん絵本中心になっていくきっかけです。

そこからはもう自己表現の手段として絵本があるという感覚も全然なくて今に至ります。

 

(つづく)

 

発売中!!

にこにこばぁ
えほんの杜/762円(税・配送手数料別)

 

************************************

作家プロフィール

新井洋行(あらいひろゆき)
1974年東京生まれ。絵本作家・デザイナー。
著書に『れいぞうこ』(偕成社)、『いろいろばあ』シリーズ(えほんの杜)などがある。

挿画に『パーシー・ジャクソン』シリーズ(ほるぷ出版)、『モーキー・ジョー』シリーズ(フレーベル館)など。
2人の娘の父でもあり、一緒に絵を描いたり、バドミントンをして遊んだり、と親子の時間を楽しんでいる。

 

 





コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です