第四回 アイデアはそこら中にある

にこにこばぁ
えほんの杜/762円(税・配送手数料別)

―秋頃にいくつか出るとのことですが、大体月に10冊ほど出されているのですか?

いいえ、たまたま集中してしまっただけで、毎月そんなに出しているわけではないです。

 

―それは、ある時期に制作が詰まるという感じですか?

今年の前半は大変でした。

 

―一年の前半に制作に集中されて、後半に発売ラッシュがはじまるような。

でも大体毎年同じリズムで年間スケジュールを決めています。

どの辺りで企画を出して、この辺りで制作して、と。

 

―企画も新井さんが考えられているのですか。

はい。もう全部。

 

―『いろいろばあ』のシリーズも新井さんが考えられたのですね。

デザインも企画も考えました。でもこれは、

当初は当時の編集者さんといろんな絵本作ろうって話になって、

大きい版型で色が冒険する絵本を考えていたんですけど、この形に落ち着きました。

―でもあかちゃん絵本っていっても、無限大ですよね。決して狭い世界じゃない。

この『せん』もそうですけど。新井さんの出される絵本を見ると、そう感じます。

アイデアですね。一時期、この世の神羅万象全てを絵本にするぞ、

くらいに思っていた頃もありました。

 

―たしかに。『せん』も『れいぞうこ』も『いろいろばあ』シリーズでは絵の具も、

すべて絵本になっていますね。

でもなんでも、テーマとしてはなんでもいいんですよね。世の中にある物。

それをどういう風に、楽しい物にしていくか。

 

―一つの物を、どう活かしていくか。

そう。だから打ち合わせとかしていて、見るもの見るもの、

絵本のアイデアになりそうな感じがするから、どんどん企画のアイデアが生まれていくんです。

 

―それは常に頭がオンの状態になってるってことですか?

オンにするとそうなってしまうので、年末から6月頃まで集中して制作する時期は

わざとオフ状態にしてアイデアを出ないようにしています。

 

―空っぽな時期ということですか?

空っぽというよりは、蛇口をひねるとアイデアがぴゃっと出てきちゃうから、閉めておくんです。

アイデアを出すという頭の回路を止めておいて、作業して、と。

切り替えをしないと、どんどん新しいことやりたくなって今の作業ができなくなっちゃうので。

 

―新井さんのプロフィールにはおもちゃ作家さんというのもありましたが、

アイデアの発想はそういうところにも活きているのでしょうか。

積み木とか作っていますね。

 

―実はおもちゃも作られているということは、存じ上げていなかったんですが、

ほかにどんなおもちゃを作られているのですか?

おもちゃも作りますが、基本は絵本が多いです。

おもちゃは教育系出版社さんの教具の企画やデザインをやらせていただいています。

お店にはあまりないですね。一時期はアンパンマンのおもちゃの企画もやっていました。

 

―基本的には、一般流通しているのは絵本のみなのですね。

絵本の企画などは、出したらボツになった、ということもあるんですか?

ボツだらけですよ。打率どれくらいだろう。2割とか3割とか。

 

―意外です。

そんなもんですよ。でもボツになっても、僕が気に入っていれば、

ほかの出版社さんに持っていって、そこから出してもらうこともあります。

 

―新井さんは、他の作家さんとも合同で描かれている絵本もありますよね。

『おえかきしりとり』とか。

 

―『おえかきしりとり』が、すごく面白かったです。鈴木のりたけさん、高畠那生さん、

よしながこうたくさんと新井さんの4人の絵本作家さんでしりとり絵本を作られて。

いいメンバーでした。今でも仲良いですけど。

 

おえかきしりとり/講談社(1,400円 税抜)

 

―豪華メンバーですよね。絵本ナビさんのインタビューでも拝見したんですけど、

それぞれが個人で絵を描いて、メールでやり取りをされて

最後デザイナーさんが皆さんの絵を組まれたっていう。何年ぐらいかかったんですか?

やり始めてからは、1年半とかでやったと思いますけど、

その前にみんなでやろうって言ってからは、3年ぐらいかかっているんじゃないですかね。

 

―その制作は一人作業とは違う苦労などあったのでしょうか。

作家って、他の作家がどうやって作っているかって、知らないんですよ。

それまでは、自分が特別な人間だと思うじゃないですか。自分が一人で、ものを考えて、

作って悩んで、けっこう悩んで、いろんなこと考えて本を作るって。

 

―孤独な闘い?

そう、孤独だし、かなり考えていると思っていたんですけど、ああやってみんなでやると、

「あ、みんな一緒だ」って(笑)特別なわけじゃないんだって、

みんなかなり考えて作っているんじゃんって気づきましたね。

 

―でもそこで悔しいと思うよりは、楽しみとか刺激の方が多かったですか?

や、楽しいという思いしかなかったですね。

 

―『おえかきしりとり』はすごく新しい試みだなと思うと同時に、大人が読んでも楽しかったです。

ありがとうございます。そうね、作っている本人たちも結構楽しんで、遊びで作っているから、

その空気感が伝わるといいですね。

 

―表紙からも、楽しんでいる様子が伝わりますよね。

そうですよね。そこは祖父江慎さんのデザインだから、さすがですよね。

 

(つづく)

発売中!!『おえかきしりとり』もあるよ!

にこにこばぁ
えほんの杜/762円(税・配送手数料別)

 

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作家プロフィール

新井洋行(あらいひろゆき)
1974年東京生まれ。絵本作家・デザイナー。
著書に『れいぞうこ』(偕成社)、『いろいろばあ』シリーズ(えほんの杜)などがある。

挿画に『パーシー・ジャクソン』シリーズ(ほるぷ出版)、『モーキー・ジョー』シリーズ(フレーベル館)など。
2人の娘の父でもあり、一緒に絵を描いたり、バドミントンをして遊んだり、と親子の時間を楽しんでいる。

 





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