第二回 『リタとナントカ』はイラストから生まれた

この絵本の文と絵はそれぞれ違う人が担当しています。

 

文を担当した、ジャン=フィリップ・アルー=ヴィニョ(Jean-Philippe Arrou-Vignod)は

フランス南西部にあるボルドーで産まれました。

ボルドー(Bordeaux)といえばワインの町として世界的に有名ですね。

そんなボルドーワインの色が秋冬に人気のボルドーカラーの名前の由来でもあります。

 

そういえばもうひとつフランスで有名なブルゴーニュのワイン、ボジョレー・ヌヴォーがこの間解禁されましたね!

彼は児童文学の他に大人向けの小説も書いています。

彼が最初に書いた物語は大人向け小説”Le Rideau sur la nuit”という作品で、新人賞をとりました。

 

子供の頃から冒険物語を創るのが好きだった彼は大人になるとまず学校で教える仕事に就き、後にフランスを代表する出版社、

ガリマール社の児童文学部門、ガリマール・ジュネス社(Gallimard Jeunesse)でコレクションディレクターとして働きました。

劇の脚本も執筆しました。

 

絵を担当しているオリヴィエ・タレック(Olivier Tallec)はフランス出身のイラストレーターで、

これまでに何十冊もの本の絵を担当しており、日本にも何度か旅行で訪れたことがあるそうです。

日本語訳も出ている『ひつじの王さま』という絵本は彼が文章も絵も書いた作品です。

この本は、映画化もされた『バッテリー』の作者であるあさのあつこさんが訳されています。

 

この『リタとナントカ』の誕生秘話ですが、珍しいのはまず絵の方から始まったというところです。

オリヴィエ・タレックがリタとナントカのキャラクターの絵を描いて ジャン=フィリップ・アルー=ヴィニョに持って行ったことからこの物語が誕生しました。

 

アイデアを考えていた時点では、女の子となにかの動物ということで、当初は相棒をコアラにしていたそうです!

読んでいる側としてはもう犬のナントカがリタの隣にいない世界は考えられないので最終的にちび犬ナントカになってくれて

良かったなという思いです。

 

2人がタッグを組んで出来たこの『リタとナントカ』は作者の2人が子供の頃にやりたかったことなどを詰め込んだ陽気なお話がいっぱいで、彼らの代表作となりました。

子供の頃にやりたかったこととは、ごっこ遊びや好奇心にまかせたちょっとそこまでという子供にとっての冒険や、

大人の真似をしてみることなど一見なんでもない遊びのようだけれど、子供の内にしか味わえない楽しいことばかりです。

 

おしゃまで勝ち気な態度もイタズラもお互い様の姉弟のようなリタとナントカはとても気の合う相棒です。

海で、ピクニックで、家で2人は様々な遊びを生み出します。

おもちゃや道具がなくても、2人でいれば楽しいことを次々に思いつくのです。

 

2人が楽しみながら遊びを発見するやりとりを見ていると作者の2人も楽しんで描いていたのだろうなということが伝わります。

 

(つづく)


著者プロフィール

福本舞衣子

家族とともに1歳でフランスに渡り、計約10年間、幼少期と10代をパリで過ごす。高校時代は、地元フランスの進学校のL文系へ進み、

フランス文学や詩について学ぶ。日本の大学でもフランス語を専攻。現在は日本在住。

著書に『星の王子さまが話してくれた世界一幸せになれる33の言葉』がある。

星の王子さまが話してくれた世界一幸せになれる33の言葉

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