タイトルにもある通り、ある晩、ある猫 が初めて1人で夜のお出かけをするお話です。
主人公の猫は男の子の子猫。ある晩ついに、そっと窓から出て行く息子を見て、
両親猫は心配でいてもたってもいられない様子。
心配で心配で仕方ないけれど、
“親なら誰でも自分の子供が初めて1人で出かけるその日を待っている”とあります。
言うならば、猫版『はじめてのおつかい』のようなお話ですね!
出かけている間、「一晩中家で待っているなんて頭がおかしくなりそうだ!」
とお父さん猫はこっそり子猫の後をつけます。
各ページに潜む“隠れお父さん猫”を見つけるのも楽しい絵本です。
初体験にワクワク興奮している子供猫は、初めて目にする光景や、出会いや、危険に遭遇しながら、成長の第一歩を踏み出します。
どんな冒険のような晩になるのでしょう。
無事に帰ってきた息子に安堵する両親でしたが、その晩が楽しかった息子は目をキラキラさせながら何と言ったか、
お子さんがいる方ならたぶん想像出来るかもしれません。
まだ小さい大切な我が子が初めて1人で出かけるとなったら、邪魔せずに見守りたいと思いつつも、
やっぱりお父さん猫みたいにこっそりついていきたくなりますよね。
初めての日は家で待っているなんて気が気ではなくて、その間、何も手につかなくなりそうですね。
日本では小さい子供が1人で歩いている光景をたまに見かけます。(近所の公園から家に帰るぐらいの距離でしょうか)
その度に少しドキッとしてその子の無事を祈ってしまうのですが、
日本は比較的治安の良い国なのできっと大丈夫なのでしょうね。
しかしフランスでは小さい子が1人で歩いているなんてことは考えられないというのが一般常識です。
外を歩くのは短い距離でももちろんですが、家でお留守番などとにかく子供だけにしてはいけないというのが常識でした。
日本に比べて危険が多いからです。
大人付き添いの学校の送り迎えは当たり前で、
もし子供が1人で来ようものならその親は学校に呼び出されることでしょう。
共働きの夫婦も多いので、ベビーシッターさんが送り迎えをしていることが多かったと、
私をパリの幼稚園と小学校まで送り迎えしてくれていた母が言っていました。
日本は小学生になれば集団登校や友達と下校するのが普通ですよね。
そういったことに対してフランスは過保護なのでは? という声もあるみたいですが、
日本は日本で別の部分で過保護だと思われていたりもしています。
例えば子供が生まれた途端に子供中心の生活に変えてしまうところなどです。
どちらもその国の良さがあって、他のところでバランスを取っているので、
そういう文化に対して私はどちらも良いと思っています。
(つづく)
文・絵/イワン・ポモー
訳/山下明生
出版社/フレーベル館
刊行年/1996年(フランス・1994年)
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著者プロフィール
福本舞衣子
家族とともに1歳でフランスに渡り、計約10年間、幼少期と10代をパリで過ごす。高校時代は、地元フランスの進学校のL文系へ進み、
フランス文学や詩について学ぶ。日本の大学でもフランス語を専攻。現在は日本在住。
著書に『星の王子さまが話してくれた世界一幸せになれる33の言葉』がある。