主人公の男の子の猫は夜の散歩の途中、かわいい白猫の女の子に出会います。
そしてまるでデートみたいに街を一緒に散歩して、恋が始まりそうな雰囲気になります。
作者がフランス人の絵本は子供向けに書かれているものでも、現実的だったり、恋愛のお話があったりします。
それに比べて日本人の書く絵本は子供らしいお話が多いような気がします。
恋愛要素が入ってくるような絵本は大人向けに書かれたようなものではたまに見かけますが、
子供向けのものでは有名な『100万回生きたねこ』があるものの、他には私はまだあまり記憶に残るものがありません。
対してフランス人の書く絵本は何歳でも恋することは当たり前のことだと思わされるようなお話や
なかなかリアルな夫婦の形のお話などもあります。
例えば、前回ご紹介した『くまのサーシャはなくしやさん』の作者、クレール・マジュレルの
『おうちが ふたつ』という絵本は両親が別れて別々に暮らしているのでお家が2つあるというお話です。
日本にもそういった離婚などを描いた絵本があるみたいですが、
さらっとそういった内容も描いているフランスに対して、日本の方は
“思い切った内容に触れている!”、“心に響く”
といった風に1つの大きなテーマとして扱われている風潮があるのではないでしょうか。
まったりほのぼのしている絵本や結末のある物語が主流の日本に対して、
フランスは登場人物を動物などに置き換えながらも日常でおこりうるリアルな展開や人間的なお話は多くみられます。
フランス映画のような趣と言いましょうか。
恥じらいや真面目であろうという思いを強く持っていて、昔から我慢や寡黙であることを美徳とし、
集団の中の自分というものや人がどう思うかを意識する日本人。
そして生きている上で恋愛の重要度は上位ではない日本人。
対して思ったことは何でもすぐに言い、自己主張を大切にして、
自分らしく人間らしく生きることは悪いことではないと考えるフランス人。さらに恋愛大国ともよく言われるフランス。
この両国では恋愛に対しての感覚も少し違うのだと思います。
見習いたいと思う部分は両者にありますが、私は人格形成において大切な時期をフランスで過ごしたこともあり、
恋愛に対してというよりは生き方に対して、どちらかというとフランス人的な考え方を持っているのかもしれないと最近は思うのです。
フランス人にはよく“timide”(あまり喋らない人や内気でシャイな人によく使う形容詞)と言われていましたし、
日本での子供時代の学校生活などでも大人しい方だったと思うのですが、
思い起こすとルールには従わねばという気持ちは強く持ちながらも、
それ以外の我が儘に当たらない程度のやりたくないと思ったことはやりたくないとはっきり言い、
自分はこうだということを隠そうとはしていなかった自分がいたことに気付きました。
時代と共に人の性格は少しずつ変わってきていても、根本にある国民性はなかなか変わらないものなのかもしれません。
(つづく)
文・絵/イワン・ポモー
訳/山下明生
出版社/フレーベル館
刊行年/1996年(フランス・1994年)
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著者プロフィール
福本舞衣子
家族とともに1歳でフランスに渡り、計約10年間、幼少期と10代をパリで過ごす。高校時代は、地元フランスの進学校のL文系へ進み、
フランス文学や詩について学ぶ。日本の大学でもフランス語を専攻。現在は日本在住。
著書に『星の王子さまが話してくれた世界一幸せになれる33の言葉』がある。