写真/三省堂書店 池袋本店内 児童書売場「totoa」にて

【出会い4】17年の時を経て編集者さんと出会う

 

―今回、皆さんとの出会いについても伺いたいな、と思っていまして。

安藝さんは、出版社を退社した今も販促に携わっていらっしゃるほど、

この絵本には思い入れがあるということですが、その理由を教えていただけないでしょうか。

安藝:そうですね。一言で表すと惚れちゃった。で、なんで惚れたかっていうと、

惚れた彼女のどこがいいかって聞かれても「みんないいんです」っていう言い方しかできないです。

 

―言葉では語れない、という。

いしず:安藝さんがいうと、ロマンチックというより演歌ですよね。

 

―いしずさんと安藝さんの出会いは?

 いしず:1999年頃、とある雑誌で連載をやっていたんですね。

当時その出版社に勤めていらした方が安藝さんを紹介したいと言ってくださって。

ただ、タイミングが合わず、挨拶ができなかった。

だから名前も顔も知っているけれど、話しをする機会を逃していました。

それが昨年、ひょんなことで知人を通して安藝さんに改めて挨拶することができたんです。

実に17年ぶりくらいですよ。

安藝:知人の方が「絶対紹介したい、すごくいい作品があるんだ」と教えてくれたんです。

「えほんの杜」(出版社)に勤めていたので、いしずさんのアトリエで作品を拝見しました。

いしず:安藝さんに見せたのは、落書きのようなラフスケッチです。

 

―拝見して、これは絵本にしなくちゃ、と。

安藝:絵本に、というか、この本を出したいと思ったんですね。

読者を初めから決めつけて、何歳用の絵本とか、ファーストブックとかいろいろなジャンル分けがありますが、

それより以前に、自分として感動するものを出したい、と。

そうじゃなきゃ意味がないというスタンスでいたものですから。

 

―惚れた、のですね。

安藝:作品に対する集中力はものすごいものがありまして。原画を見ると、本当におわかりになります。

原画の半分も印刷で表現できていないのが残念なところなんですけれども、

ぜひ原画展などに、足を運んで、ご覧いただきたいと思っています。

 

―色つけの時も、立ち会われていらっしゃったのですか?

安藝:そうですね。それから、1ページに載せる絵を、何パターンもお描きになっていて。

いしず:赤ちゃんが見ている世界ってなんだろう。目もまだよく見えていなくて。ぼんやりしていて。

はじめて見るものは、どんなふうに捉えているのだろうかって。

色をつける前に、ちょっと立ち止まってみたんです。まず白い紙に、白い絵の具で描いているんです。

はたから見てると、無駄な作業でしょうけど。

 

―白い紙の上に、白い絵の具を塗られたのですか?

いしず:油絵のキャンバスの下地を作るイメージですかね。

その上に淡く、どぎつくならないように、色を筆で優しくなでるようにのせていく感じで。

 

―全ページですか?

いしず:最初と最後のページだけは少し違います。最初のページは、母親の胎内をイメージしています。

そこは、とにかく色を塗って、重ねている。かなり厚みがあります。

全編が空想のお話の中、冒頭とラストだけは少しリアルな描写にしたかったんです。

安藝:言葉って非常に無力で。表現できるのは限られたものでしかないんですね。

だから「絵本」には絵があります。絵で作者の思いを伝えます。

絵本として、隅々のところまで石津さんは色んな思いを託されている。

塗り重ねていることによって色んな思いを託されている。

 

―はい。

安藝:それは言葉では表せないけれども、どこかで、いつか、しらないうちに

みなさんの心に浸透してくるんじゃないか。

それは言葉にしてしまうとウソになるからだめなんですけど、だから絵本という形式が大切なのだと思います。

 

廣文館金座街本店内パネル展示用に描き下ろし
廣文館金座街本店内パネル展示用に描き下ろし

 

いしず:絵も集中力が大事なんですね。

1枚描いて、2枚目に移る時に日を空けてしまうと、タッチが変わったり、考え方も変わってきたり。

 

―そういった出会いを経て、「えほんの杜」からこの絵本が生まれたのですね。

いしず:はい。安藝さんとの出会いで、この絵本となりました。

制作の現場ではいい出会いが重なることが大切で。

信頼関係がないとケンカもできないというか。相性も含めて信頼関係ができていれば、

ケンカしてもいい方に転がっていきますからね。

 

―制作から出版まで1年くらいでしょうか。

安藝:制作から考えると1年ですけど、決まってからは半年もかかっていません。

実際コンテを拝見したのが7月で、長くはないですね。作品は旬なものですから、

できるだけあがったものをすぐに、と。

 

―旬を壊さないよう、無事2月に発売された、と。

安藝:商品としてターゲットがどうのこうのではなくて、いしずさんの生の気持ちが託されていて、

それを私がリレーして、さらにしっかりと本屋さんに届けていく、というところで

また偶然に素敵な出会いがありまして、それが「ほんをうえるプロジェクト」でした。

 

つづく

 

どうしてそんなにないてるの?表紙

どうして そんなに ないてるの?

作・絵/いしずまさし

刊行/えほんの杜

1,200円(税・送料別) 購入はこちら

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著者・協力者プロフィール

いしず まさし/石津 昌嗣 1963年広島生まれ 作家/写真家/絵描き

武蔵野美術大学卒業後、グラフィックデザイナーを経て三年間海外を放浪する。旅の途中でダライ・ラマ氏を撮影(写真家として初のポートレイト)。帰国後、写真と執筆業に携わる。著書に『モメント イン ピース』(小説集/リトルモア)、週刊SPA! 連載の『東京遺跡』(写真・小説集/メディアファクトリー)、『あさやけのひみつ』(絵本/扶桑社)、他多数。最新刊は『どうして そんなに ないてるの?』(絵本/えほんの杜)。

『どうして そんなに ないてるの?』

Instagram  https://www.instagram.com/doushitesonnani/

Twitter   https://twitter.com/doushitesonnani

 

「ほんをうえるプロジェクト」

ほんとうに面白い本をベストセラーに育てていくために本の問屋・トーハンがはじめたプロジェクトです。

ほんをうえるプロジェクトメンバーが選んだとっておきの一冊をご紹介しています。

https://ja-jp.facebook.com/honwoueru/

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