『ぞうのババール』は手塚治虫氏の『ジャングル大帝』やディズニーアニメの『バンビ』に近い物語の始まり方をします。
ジャングルで野生として暮らしていたゾウのババールがどうして服を着るようになって、
人間のマダムと親しくなって、ゾウの王様にまでなったのか。
児童向けのお話にしては内容が少し政治的で大人でも考えさせられる部分もあったりして、
フランス人が早く大人びるのはこういった幼少期に親しむお話にも影響されているのかなとも想像させられました。
フランス人は集まるとよく政治の話をします。
家にお呼ばれしたり、招待したりしてのお食事会をすることがフランスでは多いです。
そのときによく話題に上がるものの1つが政治の話です。
あまり親しくない間柄では逆に政治の話はタブーであることもありますが…自分の政治論を持っているフランス人が多いです。
若い内から政治に感心が高い人が多く、自分の意志でデモなどに参加したりすることもしばしばです。
今月あったフランス大統領選挙もどうなるのかハラハラしましたね。
「どちらにも投票したくない!」という大統領選反対のデモがいくつかあったそうです。
そこからもいかに国民が政治に関心を持っているのか分かる気がします。
フランスで有名なテレビ番組に『Les Guignols(レ・ギニョール)』というものがありました。
“guignol” とは人形劇のことで、政治家たちにそっくりな人形を使った政治風刺ニュース番組です。
人気のある番組でなんと1988年から続くロングラン!(途中、番組名を何回か変えながら)
風刺やブラックジョークが効きすぎていて、大人でもきついと感じるときがあるので、
子供には見せられない内容だと思います。
日本で同じような番組を作ったとしたら、とんでもなく苦情が来て、すぐに謝罪、そして番組が無くなると思います。
全世界のニュースを扱っているので、実際、内容が酷すぎて他国から抗議があったこともあるとか…
なのでおすすめは出来ませんが、「そこまでやっちゃう!?」という恐れない強い心というか、
チャレンジ精神というか、なんと言われようと我が道を行く、
そんなところなんかはなんだかフランスらしいなという気はちょっとするのです。
(もちろんフランス人の中にもこの番組に否定的な人はいます!)
そんな政治について熱くなるフランスなので、政治色の濃い『ババール』にも批判的な意見も一部あるようです。
大人が深く考え出したら、色々と思うところもあるのかもしれませんが、
子供たちが純粋で自由な心で読むための絵本ですのでそこまで否定的にならなくても良いのではないかなとも思うのですが。
とにかく政治に感心が高いという国民性も感じられる絵本なのではないかと思います。
著者プロフィール
福本舞衣子
家族とともに1歳でフランスに渡り、計約10年間、幼少期と10代をパリで過ごす。高校時代は、地元フランスの進学校のL文系へ進み、
フランス文学や詩について学ぶ。日本の大学でもフランス語を専攻。現在は日本在住。
著書に『星の王子さまが話してくれた世界一幸せになれる33の言葉』がある。