第五回 古本と新刊のある本屋さん

シロクマ:ひるねこBOOKSさんは、古本も扱われているんですよね。

まーちゃんママ:まーちゃんとよく話すんですけど、古本を買って読んでいると
さりげなく鉛筆で線が引いてあって、前の人はこの一行になにかを感じたんだ、って思うと、
ときめくんです。本を通じた出会いがあるというところに古本の良さを感じます。

 

まーちゃん:楽しい。たまに絵本でも古本で買うと最後のページになにか書いてある。
買った日なのかな、とか。著者さんの切り抜きだったり、いらないものだったり、色々あります。
他店のしおりとか、押し花とか。

小張:売る人も「いらないから売る」という人もいれば、「ひるねこさんに置いてほしい」とか
「ここだと大切に手にとってもらえる」といって来て下さる方もいるんです。

シロクマ:絵本などは、愛着があるけど置いておけないという方もいますよね。

小張:家族の歴史が詰まっていますよね。

まーちゃんママ:赤ちゃんの頃に読み聞かせていた絵本を友達に譲ったあと、
やっぱり手元に置きたくなって、新刊でも買い直したんですけど、違うんです。
その時の空気も閉じ込めてくれているんですよね。同じものでも別のものというか。

まーちゃん:不思議な感覚だった。

小張:なぜ古本も扱っているかというと、専門的な話ですが、新刊の利益は少ないんです。
売値が決まっていて、定価販売しなくちゃいけないから売れなくても安売りできない。

昔のように売れる時代はいいけど、今みたいに買われない時代だと
自分で利益率を決めることもできないし買ってもらえないし、と難しい。大変になっちゃう。

シロクマ:新刊書店が潰れてしまうのは雑誌が売れないとか、いろんな理由もあるけれど、
それもひとつの原因ですよね。

小張:その点、古本は自分で価格も設定できるし、仕入額も決めることができる。
たとえば一冊お客さんが持ってきて、本を200円で買い取るとする。

それを1000円なり1万円なり、と決めるのは自分なんですね。
5000円を2000円に下げるといった値下げもできる。それである程度お店を維持することができる。

シロクマ:古本だと安くて手に取りやすいから、お客さんも買いやすいですよね。

小張:もうひとつ、新刊古書店として運営している一番大きな理由としてあるのは、
本がこれだけ売れない時代に、1500円払えるかというと出せない人は多い。

営業をやっていた頃、1300円は高い、と保護者に言われたこともあるし、先生からも言われて。
値段がネックで買われないことが多いことを知りました。

作るのにはお金がかかるし、対価として買ってほしいけど、そこが高いことによって
本の世界に届かないのは残念だと思ったんです。その解決策として古本だと思った。
1300円なのが500円だと、うちの子に買おう、となってくれるから。

シロクマ:私自身も思いますが、主婦は財布のヒモが固いですからね。

小張:安い価格に設定することで、そこから本好きのこどもが育ってくれればいいな、と。
出版社や著者に還元できないから辛いけれど、読まなければ意味がない。
新刊も売りつつ、出会いのチャンスを広げるために古本をやっています。

シロクマ:そこは葛藤ですよね。できれば還元したい。値段ね、本当に。
値段の価値を伝えたいですよね。何度でも読み返せるから映画見るより安いよ!
って思うけどなかなか…

小張:いろんなアプローチがあって。新刊だけ扱うのもいいし、古本だけでもいいし、
今言った考え方で、新刊を売るための利益を確保するために古本をやっているという面もある。

お母さまが見に来てくれて、古本の絵本だと2,3冊まとめて買ってくれるんです。
どっちがいいかではなく、新刊ばかりで手に取らずにお店を出て行かれるよりはいいかなと。

シロクマ:親が古本で買っても、そうやってこどもに与え続けることで1300円出してでも買いたい
って、今度はお子さんの方で思ってくれればいいですよね。本を買って読んで、
棚に置くということが習慣になればな、と。図書館もいいけど、使い分けたらいい。

小張:新刊・古本・図書館といろんな方法があって、ひとつの入り口に。正解はないんですけど。

シロクマ:正解はないからこそ一店舗ごとに正解を発信していく。
それがそのお店の個性に繋がっていくんですよね。

 

(つづく)

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プロフィール

ひるねこBOOKS(小張隆)

童心社の営業として8年間勤めた後「ひるねこBOOKS」を根津にオープン。絵本や一般書のほか、北欧をテーマにした雑貨や書籍も取り扱っている。地域と連携したイベントや展示なども行っており、地域密着型の本屋さんとして町の人に愛されている本屋さん。

ひるねこBOOKS HP

https://www.hirunekobooks.com/

 

まーちゃん・まーちゃんママ

中学一年生の頃から「朝絵本を読むと心が落ち着く」という理由から、ライフワークのひとつとしてInstagramにて絵本の紹介を行っている親子。フォロワー数は2017年11月時点で2700人を超え、育児や読み聞かせに悩む親御さんから支持を集めている。

Instagram @nikilove48

 

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