イソール作/宇野和美訳
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―この絵本は「育児説明書」とあるように身体の仕組みをユニークに解説していますね。
ユニークだけど、科学的なわけはありません。
イソールさん本人はポエティックで感覚的だと言っています。よーく観察していますよね。
―でも訳す方も難しいですよね。科学的に説明していなくて、歯を「白い石」などと説明していて。「ゆび」くらいでしょうか。
でも口は、最初は吸引器って呼んでいるのに、あとで口って出てくるんですよね。
イソールさんに、「ここで口ってでてきちゃうけど、いいの」と聞いてみたんですけど、
しょうがないよね、おっぱいを吸わなくなるから、って。
―読み進めるうちに、身体の部位も使い方が変化していく。
見たまんまに、本当によく発達の過程をとらえていますよね。泣き声をサイレンとか、夜泣きとか、発語とか。
でも、すごくこう、あ、お子さんはいらっしゃるんですか?
―はい、2人います。4歳と1歳が。
まだちっちゃいさんなんだ。
―はい。だから絵本を読んで共感するところがたくさんあります。
私も大昔。
ふだんは忘れちゃってるけど、自分が子育てしたときの色んな事を思い出しながら、すごく楽しんで訳しました。
―最後の方、ちっちゃいさんといると昔のことを思い出すというのが今の自分にぴったりだなと思いました。
ここらへんからトーンが変わる。イソールさんらしいいいところですね。
ちょっとおっきくなってからとか、下の子がいるおにいちゃんおねえちゃんに読み聞かせても楽しいですよね。
―赤ちゃんに戸惑う父親におすすめとあったけど、兄や姉が読んでも子どもの身近な言葉を使っているので、
楽しく理解できるのかなって思います。
この本の面白いところは赤ちゃんができたらかわいいと思わなきゃいけない、
みたいなことを言ってないんですよね。
お母さんだからわが子はかわいいよね、とかそういうプレッシャーってありますよね。
一方で、愛しいと思っている私もすてき、みたいなところも。
この絵本はそうじゃない。母性神話を拒否している。
男でも女でもおじいちゃんおばあちゃんでも、みんなが「ふしぎないきもの」を育てていくんです。
―しらないいきものについて説明しているみたいな。
赤ちゃんなんだけど、からっとしているといえばしていて。
おっぱいのところも、おっぱいの絵がかいてあって「のむのはミルクです」ってあるけど
日本語だとミルクだというと粉ミルクですよね。でもこれは母乳かもしれない。
原書では曖昧に言っています。
―曖昧にすることで母親じゃなくてもいい、ということを伝えているのですね。
そうです。だから、どちらでもとれるように訳しました。
ユニセックスというか、こう! と決めつけない育児です。
―母親目線じゃなく、第三者的な目線で語られているので、
男性の目線でも、子ども達の目線でもすっと感情移入できる絵本ですよね。
(つづく)