イソール作/宇野和美訳
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―イソールさんは、どういった方でしょうか。
彼女はものすごく知的な人。『かぞくのヒミツ』を読んだときに、ユニークで面白いなと思ったんです。
初めて会ったとき、芸術家肌の人だろうかと、ちょっとおそれていましたが、とても知的で、かつ感覚も鋭い人なんだな、
という印象を受けました。何事も、よく考えているんだな、ということが伝わってきて。
社会的な発言もよくしています。
―それは、アルゼンチンの方の気質、みたいなものでしょうか。
イソールという人が、とても自由な人なんです。
でも、アルゼンチンが独裁に苦しんだ国というのも影響していると思います。
「こういうのも面白いよ」と手渡すタイプの人ですね。
―何度かお話に出ている『かぞくのヒミツ』はどういうお話ですか?
お母さんと女の子の話で、「ないしょだよ。うちのママ、ほんとはヤマアラシなんだ」と言うところから始まります。
朝ごはんを出してくれるお母さんの頭がボサボサなので。
友達と遊んで帰ると母親は綺麗に整えているけど、私だけは知っている、ママはヤマアラシだ、だから化粧道具があるんだって。
かぞくのヒミツ/エイアールディー出版 2014年(amazonより)
―日本のお母さんも同じですね。
そうですね。しかも、自分もヤマアラシっぽくなっていると気付くんです。
え、私もヤマアラシになるの、と心配になって友達の家に泊まらせてもらうことにするんですが、
次の朝みんながねているときに台所に行ってみると、衝撃の事実を知ることになるんです。
―親子で楽しめますね。
どこの子も「うちってへんかも」って気持ちがありますよね。
物語を通して「大丈夫?」と読者に語りかけてくれるような絵本ですね。
―絵の雰囲気は、『ちっちゃいさん』と同じなのですか?
絵は『ちっちゃいさん』よりワイルドです。
10年以上前の作品で、原書は2003年に出ています。
―この絵本はどのようにして日本で出せたのでしょうか。
何社かに見せましたが、強調の仕方がこわかったりややマンガ的だったりするからか、
なかなかなOKをもらえませんでした。
デザイナーの人がやっているここの社に編集者の友人が紹介してくれて出すことができました。
―『かぞくのヒミツ』を選んだ理由はなんでしょうか。
初めてイソールさんの絵本を出す、と決まった時、編集者とイソール絵本をすべて読んで、
最初は絶対『かぞくのヒミツ』だと思いました。
―イソールさんの絵本は、当時はどうだったのでしょうか。
書評などで結構とりあげられましたが、書店で置いてもらったり、図書館に入れたりは苦戦しました。
―その後、『うるわしのグリセルダひめ』も出していますね。
きれいなお姫様に、男の人がぼーっとなってくびったけになる、ほらこのとおり、といって首がころっと落ちちゃうんですよ。
「すっごくおもしろい」と言ってくださった方もいましたが、反発もありました。
絵本としてはものすごくきれいな絵本なのですが。
うるわしのグリセルダひめ/エイアールディー出版 2014年(amazonより)
―イソールさんの絵本はスペイン語圏では人気なのですか?
知名度も評価もすごく高いですね。
絵本を作っている編集者や研究者、批評家で知らないとおかしいくらい。
リンドグレーン記念文学賞をとる以前から注目されていて、国際アンデルセン賞の最終候補までいったことがあります。
―現地ではどのくらい絵本を出されているのでしょう。
多作な方ではなくて、一年に一冊出るか出ないかのペースだと思います。
去年一冊出ましたが、6歳の上の子、アントン君がうまれたあとに『ちっちゃいさん』を描き始めて、
今下の子が1歳何カ月かくらいじゃないかしら。
(つづく)