第一回 絵本が、娘の不安をおしえてくれた

―まーちゃんの絵本紹介、いつも楽しみに見ています。

まーちゃんママ(以下ママ):ありがとうございます。

はじめはただ知人向けに遊び心で始めたもので、まさかこんなことになるとは思っていなかったんですよ。

 

―まーちゃんの絵本紹介を見ていると、幼い頃の思い出なども見えてきますが、どのように絵本を選んでいたのですか?

ママ:自ら選ぶようになったのは幼稚園くらいでしょうか。

なんとなくのルーティンがあって、お互いが1冊ずつ選ぶんですね。

なにがいい?って聞いて。

そこで持ってきた絵本でメンタルを見るんです。

持ってきた絵本をみて、あ、これを選んだってことは、なんかあったかな、と思うんです。

でも直接は聞かない。読みすすめながら、さり気なく聞いてみると、ちゃんと答えてくれるんです。

何に傷ついたか、悲しかったかって、ぽろっと話してくれて。

 

―絵本を読むことできっと背中を押されて、言葉にできなかった思いが伝えられるようになるんですね。

ママ:それに対して、アンサー絵本を用意するんです。『あすはきっと』とか。

たいがいつまんないことなんですよ。

でも彼女にとっては真剣で。それを、「それはね…」と理屈で説明するよりも

『あすはきっと』を読むほうが、効果があるんです。

あすはきっと
『あすはきっと』(Instagramにて。書籍詳細は下記)

 

―ただ漠然と「どうだった?」と聞いてみても「うーん、わかんない」と答えちゃう。それよりも、絵本を選んで心の会話をするというのは、素敵ですね。

ママ:日中は仕事をしていて、夜は寝かせなくてはいけないし、じっくりと聞く時間がないんですね。

一対一で向き合って聞く時間は、せいぜい幼稚園の送り迎えのときだけで、帰宅すると家事でバタバタしてしまう。

 

―仕事をしていると、なかなか向き合う時間が取れないという気持ちはわかります。働くお母さん共通の悩みですよね。

ママ:だから、普段ゆっくり向き合えないことへの罪滅ぼしも含めて、

ゼロにするつもりで読んでいました。アンサーを読んだから許して、という感覚です。

たくさん聞けない分、選んでもらうことで気持ちを知る。

じゃあママはね、といって読むとすっと寝る。心のバランスですよね。

 

―この日は楽しかった!というときの絵本もあるのですか?

ママ:はい。これを選んだってことは楽しいんだなって思うこともある。

『素晴らしい季節』とか。その日一日楽しく過ごせた、なんでもない日などは季節ものだったりしましたね。

私の選ぶものはアンサー絵本が多かった気がします。

 

すばらしい季節

『すばらしい季節』表紙(詳細下記)

 

―一日の最後の締めくくりは、絵本を通して会話することだったんですね。

ママ:たとえば、学校とかで特に問題とかなかったとしても、

絵本を読まないとかえって不安定になっちゃうくらい(笑)

リセットのスイッチがない、というくらい大事なものになっていました。

自分も気持ち悪いんです。読まないと一日が終わらないんです。

本当に歯磨きや食事と同じ感覚でした。

 

―うちは、その領域まで達していないかも…(苦笑)まーちゃん親子にとっての、心の安定剤だったのですね。

ママ:毎日違う絵本じゃなくても、同じ絵本だったこともるんですよ。

ただ毎日読んでいました。だんだん意地にもなるくらい(笑)

まーちゃん:絶対だったよね。毎日。なにがあっても。

 

―読み聞かせの習慣はいつごろまで続けていたのですか?

まーちゃん:4年生くらいまでは一緒に読んでいました。

その頃から自分でも読み始める時間が増えていって。

そのうち大好きな、運命の本ともいえる本に出会って、自分の世界が広がっていきました。

5年生くらいからは絵本も扉を閉じたまんまになっていて。

ママ:1年生になると、児童書が増えて絵本は少しずつ減っていきました。

一緒に読むのも好きだけれど、一人で読む時間が増えましたね。

 

5年生でやめて、中学1年生ではじめたということは、2年間さわっていなかった?

ママ:あるとき、こんなにあるけど手放したくないね、じゃあどうしよう?

となったときに、絵本棚の扉を開くと、思い出の扉も一緒にうわっと開いたように感じて。

まーちゃん:2年て、とても短く感じるんですけど、扉を開けたとき、

とても懐かしい友人に会ったような、すごく久しぶりな感覚になりました。

 

―そしてまた、大切な家族の一員として、お2人の時間を結ぶことになったのですね。

ママ:今もまた絵本に助けてもらっている感じですね。大きくなるまで毎日繰り返していたし、

今は今で視点が変わってまた違う会話ができることもあるし。

まーちゃん:この前赤ちゃん絵本で泣いちゃった。って。最近2人で泣いちゃいます。

 

―時を経て視点が変わるというのは読書の醍醐味ですよね。まーちゃん自身は、どんなふうに視点が変わったと感じますか?

まーちゃん:小さい頃は絵だけを楽しんでいたけど、

文章を読むとこういう話だったんだって泣いちゃったり。

今も、絵本から癒されたり励まされたりする力をもらっています。

 

(つづく)

 

 

今回登場した絵本

『あすはきっと』

作/ドリス・シュワーリン

絵/カレン・ガンダーシーマー

訳/木島始

出版社/童話館出版

出版年/1997年 価格/1,296円

 

『すばらしい季節』

作・絵/ターシャ・テューダー

訳/末盛千枝子

出版社/すえもりブックス  絶版

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