―赤ちゃん絵本などの紹介はされないのですか?
ママ:まさかInstagrramで紹介をするなんて当時は想像もしていませんでしたから、
赤ちゃんの時に読んでいたのはほとんど譲ってしまって手元にないんです。
手放したもののなかには、惜しくなって買い戻すこともあるんですけど、
開いた時の空気が違うんですよね。
同じ絵本なのに、自分の絵本は思い出ごと閉じ込めているんだなって感じます。
―そういえば『はじめてのゆき』(中川李枝子・作)にも書き込みがある、
と以前紹介されていましたね。
ママ:『はじめてのゆき』は大好きだったね。2歳から小学3,4年生くらいかな。
結構な年齢まで気に入って読んでいました。
『はじめてのゆき』(Instagramより)
―今もお気に入りの絵本などはありますか?
ママ:今朝も、『ちいちゃな女の子のうた わたしは生きてるさくらんぼ』という絵本について話していました。
これには、忘れられない思い出があるんです。
まーちゃんが年少の頃、大きくなったら何になりたいかって聞かれたときに、
みんなは「おひめさま」とか「お花屋さん」って答えるなか、
まーちゃんだけ「ちょうちょになりたい」って。
まーちゃん:たぶん、『はらぺこあおむし』に夢中だったんだと思います。
―皆が人間としてあるべき姿を言うなか、ひとりだけ「ちょうちょ」と。
ママ:わたしは普段からよく耳にしていたから不思議に思わなかったんですけど、
からかわれたみたいで、しょんぼりと帰って来たんですね。
そのときにこの絵本が大活躍したんです。
この女の子が、「私は赤、金、緑にもなりたい、と。生きているさくらんぼであり、
りんごでもあり、となんにでもなりたい、でも私はいつも私、新しくなる」というお話しなんです。
『ちいちゃな女の子のうた‘わたしは生きてるさくらんぼ’』(詳細下記)
―見た目は変わっても自分らしさを失わず、私らしく生きる、と。かっこいいですね。
ママ:私、泣いちゃうんですけど、この「ちょうちょ事件」のときに真っ先にこれを読んだんです。
以来何回も登場しました。突飛な事を言い出すまーちゃんに対して
「大丈夫」と私が言うのではなくて、この絵本に伝えてもらっていました。
親が直接伝えるよりも、絵本のフィルタ-がはいることでやさしく伝わるんです。
まーちゃん:聞きながら、心にすんなり入ってきて、いいんだこれでー、って思えました。
―今も、まーちゃんの心の中に息づいている絵本ですか?
まーちゃん:今、演劇をやっているんですけど、よくこの本を思い出すんです。
演劇って別のものや物質になる必要があって。ぱっと水や火になってくださいって
先生から言われると、この絵本の「なんにでもなれる」って言葉を思い出します。
見た目は変わっても魂は変わらないって。ほかの絵本もですけど、日常
に絵本が潜んでいる感覚があります。
記憶の根っこにあるものが絵本の言葉だったりすることは多いですね。
―今も、いろんな絵本の言葉がまーちゃんを支えてくれているのですね。
ママ:私自身も育児をするにあたって教えてもらった絵本もあります。
まーちゃんは、なかなかおしゃぶりが手放せなかったんですけど、「ダメでしょ。」だと
なかなか卒業できないんです。捨てようとすると泣いちゃうし、
私にとっても娘の分身みたいに思えて手放せないし…
―そこで、絵本に頼られた、と。
ママ:もう、「助けて絵本!」という感じで、おしゃぶりをすんなり卒業してくれるのにいい絵本はないか、と探して。
で、なんとか「これだ!」という絵本を見つけて読んでみたら、
ゆっくりとおしゃぶりを卒業できるようになりました。
親子で「そうだよね。やめなきゃいけないよね。がんばろう。」って励まし合いながら(笑)
―もうひとりの「親」のような存在ですね。心強い。
ほかに思い出に残っている絵本などありますか?
ママ:たくさんありますけど、『ティッチ』もよくねだられました。
パット・ハッチンスさんの絵も好きだったんだと思うんですけど、最後達成感があるのかな。
兄姉の持っているものに憧れる弟が、最後2人も驚く結果を生むという話で、
そこが素晴らしくて。
「はああ!よかったね!」ってなるんです、毎回。
まーちゃん:報われたね!って何度も読んでもらったのを覚えています。
『ティッチ』(Instagramより。書籍詳細は下記)
―ラストを知っていてもまた読みたくなる、というのもまた読書の楽しみですよね。
ママ:同じように『ロッタちゃん』シリーズも本や映画で何度も見ました。
誕生日を祝うシーンに出てくる「きょうはロッタが生まれてきた日とくべつな日♪」
という歌が大好きで、まーちゃんが一番最初に覚えた誕生日ソングなんです。
まーちゃん:だから、周りとずれるんです。この歌を歌おうとしたら周りが
「ハッピバースデー…」って。あれっ?ってなっちゃう(笑)
―でも、ずれても大丈夫だってことも、また『わたしは生きてるさくらんぼ』が教えてくれるのですね(笑)
(つづく)
登場した絵本
『はじめてのゆき』
作/なかがわりえこ
絵/なかがわそうや
出版社/福音館書店
出版年/1996年 定価/864円
『はらぺこあおむし』
作・絵/エリック・カール
訳/もりひさし
出版社/福音館書店
出版年/1976年 定価1,296円
『ちいちゃなおんなのこのうた‘わたしはいきてるさくらんぼ’』
作/デルモア・シュバルツ
絵/バーバラ・クーニー
訳/しらいしかずこ
出版社/ほるぷ出版 絶版
『ティッチ』
作・絵/パット・ハッチンス
訳/いしいももこ
出版社/福音館書店
出版年/1975年 定価1,188円
『ロッタちゃんとじてんしゃ』
作/アストリッド=リンドグレーン
絵/イロン=ヴィークランド
訳/やまむろしずか
出版社/偕成社
出版年/1976年 定価1,728円