第二回 こどもがよろこぶ絵本作り

にこにこばぁ
えほんの杜/762円(税・配送手数料別)

 

―対象が、自分の心の中の思いから目の前のこどもに変わっていかれた?

そうですね。

 

―会社を辞める直前に生まれたということで、まずははじめに志していた

ファンタジー絵本を描かれて。心情に変化が生まれながら描きあげたのですか?

なんというか、0歳児の子ってまだ生まれたばかりだし、

最初から絵本の読み聞かせに意気込んでいたわけではないんです。

だから当初は自分が絵本作家になりたいという思いと、我が子に絵本を読もう、

というのは全然リンクしていませんでした。

気持ちに変化が生まれてきたのは1歳くらいからですかね。

 

―だんだんコミュニケーションがとれてきて楽しくなる時期ですよね。

自分の子はこういうことを喜ぶのか、とか。絵本読んでいると、自分の子が喜ぶと同時に、

自分が子供と喜びを共有できる時間があって。

そこに、自分と子どもの時間の間におかれるものとして、

自分の作った絵本があったらいいなってなって、で、『れいぞうこ』を出して、

その流れで『にこにこばあ』に繋がっていくんですね。

 

―お子さんがきっかけで、今のあかちゃん絵本が誕生したんですね。

そうですね。作りたいって思ったのと、作っていて楽しいって思ったのはこどもですね。

 

―作ったときに、一番に喜んでほしいというか、読者対象はご自身のお子さんだったりしたのですか?

自分の子もそうですけど、こどもが通っていた保育園で自作の絵本を読み聞かせをしていたんですね。

『れいぞうこ』を読み聞かせたときは壮観でした。

僕がなにもお願いしてないのに、「牛乳さん」って言ったら、皆で「はーい」って返事があって、

これすごいなって思って。

 

れいぞうこ/偕成社(600円 税抜)

 

―いいですね。コミュニケーションがそこで成立して。

そのときからずっと続いている感じですね、自分の子や友達の子もそうですし、

あと同世代の、同じ感覚を持って子育てしている親御さんに向けて描けたから、

すごいいいタイミングで絵本作家になったんじゃないかなと思っています。

 

―別のインタビュー記事を拝見したら、保育士さんに読んでもらって

自分が読んでもらう立場になることでこどもと共感できる、みたいなことが書いてあって。

そうですね。やりました。娘が通っていた保育園で。あれもいいですよ。

 

―それもまた、新しいっていうか面白いなって思いました。

もうずっと以前のことなので、忘れていましたね。

保育士さんや親御さんが読んでいるのってナチュラルなんですよね。

 

―変に技巧をこらしていないですよね。

肩肘張らずに、ニュートラルというか、読んでやるぞ、という感じではないですもんね。

 

―今お子さんはおいくつですか?

上の子はもう12歳で、下は、9歳10歳かな。

 

―じゃあもうわりと絵本からは遠ざかっているのでしょうか。

もう全然ですよ。もう僕の描いている絵本も全然知らないぐらい。

 

―お子さんが小さいときは、読み聞かせなどされましたか?

今も時々、僕が読みたくなったら「よもよも」って読みます。

でも、本がきらいなので読まないんです。絵を描いたり、ものを作ったりする方が好きですね。

 

―そうなんですか。読み聞かせは楽しんでいたけど、読書はまた違ったのですね。

満足したのかもしれませんね。めちゃくちゃ読んだから。

また読むようになるといいんですけど。今、スポーツに夢中なんですよ。

 

―そうなんですね。でも未だにこうしてあかちゃん絵本を続けている理由というのは?

それが、そのときは目の前のこどもに向けてあかちゃん絵本に移行して行ったんですけど、

そのうち僕自身があかちゃん絵本楽しいなって思うようになったんです。

結果的にあかちゃん絵本作りに向いていたんじゃないですかね。

 

―ストレスなく描けている、と。

そうですね。シンプルなものが好きっていうのと、あとアイデア出すのが得意だなって。

ものづくりをしていて、シンプルであることってあかちゃん絵本にマッチしているんですよね。

音楽も、テクノとか好きなんですけど、あれもシンプルというか、ミニマルな世界なんですね。

独特で面白い・楽しいフレーズっていうのを繰り返すという音楽なんです。

そこがあかちゃん絵本に通じるなと感じます。自分の嗜好性が向いていたんじゃないかな。

 

(つづく)

 

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にこにこばぁ
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作家プロフィール

新井洋行(あらいひろゆき)
1974年東京生まれ。絵本作家・デザイナー。
著書に『れいぞうこ』(偕成社)、『いろいろばあ』シリーズ(えほんの杜)などがある。

挿画に『パーシー・ジャクソン』シリーズ(ほるぷ出版)、『モーキー・ジョー』シリーズ(フレーベル館)など。
2人の娘の父でもあり、一緒に絵を描いたり、バドミントンをして遊んだり、と親子の時間を楽しんでいる。

 

 

 

 





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