第五回 絵本は親とあそぶ「おもちゃ」

にこにこばぁ
えほんの杜/762円(税・配送手数料別)

―以前あるインタビュー記事を拝見したときに

「絵本は絵本として捉えるんじゃなく、おもちゃとして考える」ということもおっしゃっていて。

おもちゃというか、さっきも触れましたが、彼らは大人のルールに縛られてない人たちだから、

どれもなにもかも一緒ですよね、たぶん。

 

―車と絵本が並んでいても、これは本、これはおもちゃ、とかじゃなくて、どっちも遊び道具、

というような。

こどもの頃、洗濯ばさみがすごい好きで、繋げてものを作っていたんですよ。

洗濯ばさみは僕にとってすごいよくできたおもちゃだったんです。

だから、大人が洗濯ばさみなのかブロックなのかって決めることじゃなく、こどもが決めることだ、

という感覚があるんですね。

 

―そうですよね。絵本だと、親が絵本を食べたらぐちょぐちょになるからだめとか

思ってしまいますが。

そう。舐めてもいい絵本とか作りたいんですよね。味がある絵本とか。

本もおもちゃも、積み木もブロックも全部同じ。こどものエンターテイメントとしてそばにあるもの。

 

―こどもが絵本を噛んじゃうともったいないって思っちゃう親御さんもいますもんね。

絵本のなにが優れているかというと、大人が参加しやすいということですよね。

ただこどもの方へ絵本を広げて文章を読めば、それで反応してくれる。

おもちゃだと想像力とか、ひと手間加えて一緒に遊ばなきゃいけないから、

大人の技量が試されてしまう。

本は、僕ら作家が「大人がただこの文章読めば、楽しめますよ」という思いも込めて

工夫して作っているので、そこが違いますよね。

 

 

―うちも、線路を買ったんですけど、私に発想力がないのでうまく遊びに誘えないんです。

繋げ方ひとつ取ってもマンネリで。こどもだって、生まれたときからクリエイティブなわけはなくて、

ちょっと背中を押すことが大事だと思うんですよ。

そうですね。こどもに白い紙を渡してもなかなか描かない。きっかけをこっちが提案しないと。

 

―きっかけですごく変わりますよね。おっしゃるとおり、絵本というのは読むだけで

別の体験を味わわせてくれる。作家さんが全て用意してくれているというのは、納得です。

あと、僕自身がこどもと読んでいて楽しいなと思ったことは、

こどもの気持ちとシンクロできる瞬間が感じられるっていうことですね。

うちの子こんなところでこう楽しむんだ、と知ることができる。その経験値が増えてくると、

少しずつこどもの気持ちが分かる様になってくるんです。こどもと気持ちを通わせる道具として、

読み聞かせはあるんじゃないかな、と思いますね。

 

 

―きっかけも必要だし、きっかけを与えたつもりが、違う物が出てくるという。

それもまた面白いですよね。

絵本はがんがん読んだ方がいいですよね。あかちゃん絵本なんて、特に分からないですよね。

『もこもこもこ』とか、はじめ読んだとき大人は面白みがわからないけれど、こどもはもう、

ばんばんたたいて喜んで。お父さん・お母さんはそういった違いを楽しめますよね。

 

―『もこもこもこ』はうちの子も大好きですね。きゃははは、と笑っています。

保育園で知ったみたいで、本屋さんで見つけたら持ってきて、こどもに教えられました。

僕も絵本作っていますが、こどもに楽しんでもらえるって自信なく作っているんですよ。

だって『もこもこもこ』も、はじめはなにが楽しいかわかんなかった訳だから。

たぶん、こどもとかあかちゃんの感覚と自分の感覚は、絶対分かり合えないと思ってるんです。

 

―でもこうやって人気シリーズ出たってことは、感想や反響があったってことですよね。

ラッキーとしか言いようがないですね。わかんないのに、いっぱい出していて、

なんかこども喜んでくれているぞ。って。

 

―そこには、シンプルだからこそ届いているっていうのもあるんじゃないでしょうか。

唯一、僕が「こうじゃないかな」と思っているのは、親御さんが読むと盛り上がるような展開とか、

親子で楽しめるように、とは思っています。「いろいろばあ!」って。

それだけでも親御さんは読みやすいですよね。

―「いろいろ、ばあ!」と親もテンション上がってしまいますね。ちょっと声色変えてみようかな、

とか。自分もこどもになって楽しめるところがありますよね。

そんな思いも読み聞かせに乗せているところは、私自身あります。

分かります。その歳その歳の感覚を一緒に楽しんじゃおうってありますよね。

 

―だから逆に、こっちがそのつもりでやったときに、

向こうがとても冷静だったら、恥ずかしいこともあるんですけど。

ほんとに、アンパンマンとか先に向こうが卒業しますからね。

 

―そうなんですよ。びっくりします。まだ見ていたいのに、もう見ないの?って。

こんなにキャラクターの名前覚えたのに、もう興味ないのみたいな。

 

―まだ喜ぶ、といつまでも思っていたら、もうこどもは次の世界を見つけていますからね。

あっという間に。でも絵本だと、読んだらその記憶も残っている感じがするから、

絵本は長く楽しんでくれるのかなっていう気もします。

またこどもたちが大人になって、自分の子にも、同じ絵本読んでくれるようになると

一番いいですけどね。それが僕だと、30年後ぐらいですか。やってくるかもですね。

これを読まれた子どもが大人になって。

 

―絵本って残しているご家庭が多かったりしますよね。

まあそれはね、古くなって新しい物買っていただいた方が、僕はありがたいです。

 

―確かにそうですよね。でもこれあかちゃん絵本なので買いなおされる可能性は高いですね。

まあまあ、それは冗談ですけど(笑)自分が子供の時読んだのを、

孫がそれを読んでくれるってことか。30年後に続編を出すとかいいですよね。

「えー、あのときの絵本だー!」みたいな。

 

―あーいいですね。親子でリレーできる絵本は素敵ですね。

 

(つづく)

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作家プロフィール

新井洋行(あらいひろゆき)
1974年東京生まれ。絵本作家・デザイナー。
著書に『れいぞうこ』(偕成社)、『いろいろばあ』シリーズ(えほんの杜)などがある。

挿画に『パーシー・ジャクソン』シリーズ(ほるぷ出版)、『モーキー・ジョー』シリーズ(フレーベル館)など。
2人の娘の父でもあり、一緒に絵を描いたり、バドミントンをして遊んだり、と親子の時間を楽しんでいる。

 





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