第七回 出会いが作家の道を拓く

にこにこばぁ
えほんの杜/762円(税・配送手数料別)

―最後に、絵本作家を目指している人に向けて、作家デビューした経緯について
 おうかがいしたいのですが、新井さんが最初の絵本を出したきっかけは、持ち込みでしたか?
持ち込みです。会社を辞めるとき、ツテもなにもなかったので、全部飛び込みで営業しました。

―けっこう冷たくあしらわれませんでしたか?
門前払いを食った事もたびたびありました。でも冷たい人以上に、作品を持っていくと
「うちでは君は出せないけど、君のこと紹介してあげるよ」っていう人がいっぱいいて、
それがどんどん仕事に繋がっていきましたね。

―1冊目の本を出すのに、何社ぐらいまわったのですか?
覚えていないけれど、出すのに1年~2年はかかりましたね。1年間はほとんど仕事なくて、
1年目でまわったところから翌年仕事もらえて、3年目でデビューできたのかな。

朝日小学生新聞で連載を持たせてもらって、それをまとめたのが、
漫画と絵本の中間みたいな本がフレーベル館で出たんです。

―1作目ですね。
それがある程度売れたので、次にオリジナルで、さっき話したムーミン的な世界観の本を2冊、
フレーベル館で出させてもらって。そのときの担当編集者さんが偕成社に移って、
そこから『れいぞうこ』を出したらそれが代表作になって、そこからどんどん広がっていきました。

そんな感じです。

 

―企画力も必要ですが、同じくらい、コミュニケーションも大切ということですね。
最初のきっかけは人柄やキャラクターも大切だと思います。
でもそこでそれなりの結果を出してないと、次はないですよね。
はじめは皆さんの力をお借りできたのがよかったなって思っています。

―そうですよね。出版社も、1作目は投資という部分が大きいですよね。実績がないことには。
 でもそこで、実力を発揮されて。絵本部でボローニャ絵本原画展に入選された方も
 活躍されているのですか?
いや、全然。ゲーム会社でゲーム作っています。絵本部から作家になった人は僕しかいないです。
なかなかなれないですよね。

―新井さんは、辞めた当初はなれるって目処はありましたか。
なれるって思っていました。僕、ひどいんですよ。僕という才能が世に放たれたら、
えらいことになるぞって思っていましたから。

―当時は20代ですか?
20代。ゲーム会社にいたんじゃもったいないと思っていたんで。アホだったんですよ。
今はまぁまぁぼちぼちやれていますけどね。よかったです。

―新井さんは、シンプルなデザインのあかちゃん絵本のほかに、
 『パーシー・ジャクソン』の装画もされているんですよね。
はい、単行本と文庫と、両方やっています。

―絵のテイストが、全然違いますよね。ファンタジーの世界観を絵に現すというお仕事は、
 ファンタジーを描きたかった自分とはまた違う感覚ですか?
なんでも描きますよ。『パーシー・ジャクソン』シリーズはすごく楽しかったです。
ギリシャ神話も好きなので、楽しんで書けました。

―装画もけっこう描かれているのですか?
あとは『モーキー・ジョー』ってシリーズだけですね。

―『パーシー・ジャクソン』シリーズの表紙を見たとき、
 まず新井さんの絵だって思わなかったんです。
あー、それは皆さんに驚いてもらいましたね。さっき話した、
自分の絵柄でゲームを作ったら辞めようって思ったときに作ったゲームが
スケボーのゲームなんですけど、『パーシー・ジャクソン』に近い絵柄で描いていました。

―RPGのような雰囲気が伝わります。領域の広さがすごいですね。
今、アプリも作っているんです。

―絵本系のアプリですか?
いえ、全然違います。今こどもたちがスマホとかで時間をつぶしているじゃないですか。
それをいやだなって思っている大人たちが、作っているんですね。

こどもがちょっとだけゲームをして、今日はここまで、とやめることができるアプリを作ろう、と。
少しだけ遊んだら、それ以上はできないようにするんです。

―それは今のお子さんの年齢を考えて、ですか?
いや、もっと小さい子向けなんです。

―そうなんですね。小さい子でも親がスマホいじるとこどもも触りたがるし、
 どうせ触るならせめて大きい画面にしようと思ったのがきっかけでタブレットにしています。
そうなりますよね。僕も、どうせ触るなら、僕が作る、楽しめる世界観で楽しんでほしいって思って
アプリを作ることにしました。勝手に思っているだけなんですけど。

―ネットで適当に拾ったものよりは、こどものゲームに触れる時間のことなどを考えて
 作られたアプリを使ってほしいですよね。
 うちもアルバムを見せていたつもりが気づけばyoutubeを見ているんです。
あー、危険ですよね。

―このご時世、こどもとスマホを隔離することが難しいなか、
 そうして工夫されたアプリを作られてるっていうのは素敵ですね。
特に小さいお子さんは親のものを触りたがりますからね。
小さいお子さんが楽しめるよう、本当に短い時間で遊べるアプリです。

―絵本やおもちゃ以外でも、いろいろと活動されているんですね。
したいんですけどね、もっといろいろ。でも絵本作りが楽しすぎて、
つい絵本作りに時間を費やしてしまいます。

 

―これからも、新井さんの新作絵本が生まれていくことを楽しみにしています!
 新井さん、インタビューを受けていただきありがとうございました!

 

『にこにこばあ』も『せん』も新井さんの「発想」が形になったおもしろい絵本です。
お子さんと楽しい発想の世界をお楽しみいただけます☆

 

 

(おしまい)

発売中!!みんな、絵本であそんでね!!

にこにこばぁ
えほんの杜/762円(税・配送手数料別)

 

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作家プロフィール

新井洋行(あらいひろゆき)
1974年東京生まれ。絵本作家・デザイナー。
著書に『れいぞうこ』(偕成社)、『いろいろばあ』シリーズ(えほんの杜)などがある。

挿画に『パーシー・ジャクソン』シリーズ(ほるぷ出版)、『モーキー・ジョー』シリーズ(フレーベル館)など。
2人の娘の父でもあり、一緒に絵を描いたり、バドミントンをして遊んだり、と親子の時間を楽しんでいる。

 

 





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