第三回 小さなクマ「ドゥドゥ」の存在

この絵本の絵を担当された ローラン・リエナールの絵はとても魅力的で好きです。

彼はピーター・エリオット(Peter Elliott)というペンネームで他にもたくさんの絵や絵本などを描いています。

ローラン・リエナールの名で描いたのはこの『くまのサーシャはなくしやさん』(彼にとって初期の絵本)と

サーシャシリーズの『SACHA & GRAPPY』までのようです。

彼1人で書いた絵本や奥さんと書いた絵本もあります。他にコミックの絵なども描いています。

そしてなんとロック歌手ミュージシャンでもあったんです!

 

 

さてそんな才能溢れる彼が描くこの絵本の絵の中で、主人公の家族以外にほぼ毎ページ登場する小さなクマがいます。

サーシャが肌身離さず持っているクマのぬいぐるみです。

そのぬいぐるみがとっても可愛いんです。途中からその小さなクマちゃんを毎ページごとに探すのが楽しくなってきます。

 

最後に片付けられて整列しているぬいぐるみたちの中に、その小さなクマちゃんはいません。

どこにいるのかと言うと、サーシャの手にしっかり握られているのです。

いかにサーシャにとって特別で大事なものなのか分かりますよね。

 

ドゥドゥ

 

サーシャと小さなクマちゃんはいつも一緒です。親友であり、家族なのです。

フランスでは赤ちゃんの頃から両親と別々の寝室で寝る習慣があります。

自立心を養うためや、夫婦の時間を大切にしたい、ということが主な理由として挙げられます。

そんなフランスではドゥドゥ(doudou)といって、

赤ちゃんの頃からいつも一緒のお気に入りのぬいぐるみを持つのが一般的です。

幼い頃から自分のベッドで1人で寝るフランスの子供たちが寂しくないようにドゥドゥの文化があるのですね。

サーシャにとって小さなクマちゃんはいつも一緒にいてくれる大切なドゥドゥなのです。

 

私が前に書かせてもらった著書

星の王子さまが話してくれた世界一幸せになれる33の言葉第9章に

『今でもずっと大切にしているものをあなたは持っていますか?』という章があります。

その章に抜粋した『星の王子さま』の一節が私はとても好きです。

「子供たちはひとつのお人形さんにたくさんの時間を費やすからそれがとても大切なものになったんだ」

ということを王子さまが言うシーンなのですが、

初めて読んだとき、なんだかジーンとしました。小さい頃にずっと大切にしていたものってないですか?

それが大切になる魔法をかけるのは一緒に過ごす時間の長さだったんだなと知れた一節でした。

サーシャもその魔法を毎ページ、小さなクマちゃんにかけながら、

ついでに読者にも小さなクマちゃんが愛おしくなる魔法をかけているのですね。

ドゥドゥの存在

(つづく)

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くまのサーシャは なくしやさん

文/クレール・マジュレル

絵/ローラン・リエナール

訳/末松氷海子

出版社/童話館出版

刊行年/2006年(フランス・1994年)

価格/1300円(税抜)

当店取り扱い/入荷待ち

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著者プロフィール

福本舞衣子

家族とともに1歳でフランスに渡り、計約10年間、幼少期と10代をパリで過ごす。高校時代は、地元フランスの進学校のL文系へ進み、

フランス文学や詩について学ぶ。日本の大学でもフランス語を専攻。現在は日本在住。

著書に『星の王子さまが話してくれた世界一幸せになれる33の言葉』がある。

星の王子さまが話してくれた世界一幸せになれる33の言葉

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