学陽書房/1,600円(税・配送手数料別)
―本を出す前は、料理に関することをいろいろされていたのですね。
高校から大学までオーストラリアに留学していました。
19歳で帰国してから店をするまでは、両親がしているマクロビオティイクの仕事に携わったり、
環境や子供に関するイベントやワークショップなどの企画や運営に携わることもありました。
とにかく好奇心が旺盛だったので、興味があることなら、様々な人と色々なことをしたいと思って過ごしていたように思います。
― マクロビオティックは、食材などを見てみるとまだまだ輸入品が多いですよね。
東京などの都心では買いやすいけど、地方では難しいのかな、と思うこともあります。
オーガニック文化でいったらまだまだ日本はがんばらないといけないですね。
当たり前というところからは遠いかなと。
―もっと浸透すれば、価値観も変化して、食卓のラインナップも毎日いろんなスープが並ぶ、
などと変わってくるのかな、と思うんですが。
過ごしてきた環境によって変わると思いますが、私自身は自然豊かな山で育ったので、
自然という存在そのものの大きさというか、彼らに生かされている、時に脅威になる、ということを肌で感じて、
自然といのちと食は繋がっているんだ、と感じてきましたね。
―以前はご実家で畑があったとのことですが、現在はいかがですか。
今は一人暮らしですし、ベランダのプランターでやっているくらいですが、育てています。
―土と、自分の命が繋がっているという感覚は、ご自身の体の一部として根付いているのですね。
子供のころの環境がそうだったので、根っこになる上での価値観になったかなという思いはあります。
三つ子の魂と言われるように、心の栄養というか、体の一部というか。原体験ですね。
―幼いころから食材に触れていたのがきっかけで、料理家を目指されたのですか?
いいえ。実ははじめから料理人になろうと思って今に至るわけではないんです。
―ええ! 意外です。
学生のころは美術をやっていて、その後は国際協力関係の仕事をしていました。
ジェンダーとか貧困とか環境とか教育とか、東南アジアの国々の各団体と日本の企業を繋ぐ仕事です。
充実はしていましたが、だんだん、小さな日本という国が、これだけ物質的に豊かを超えた今、何が大事なのか。
何にも感謝をするとかもったいなくするとか、日本と各国を往復する中で思うところがあって。
―海外に行ったあと、日本に対する視点が少しずつ変化していかれたのですね。
食ってとてもパーソナルなことだと思うんです。好き嫌い、何を選ぶか、どうやって食べたいか。
パーソナルですけど、ソーシャルイシューでもある。
誰かと、というのでも一緒に食べるか別々で食べるか。
それが大きくなると社会的な食の流通とか値段設定とか経済から環境から、と、どんな事柄にも通じていく。
人種も文化も立場も職業も関係なく人がひとつのテーブルについてシェアしたらそこで繋がれるのが、食事なんです。
食事で広がるコミュニケーションの輪(TOSCA Facebookページより)
―食は、言葉を超えるコミュニケーションツール、ということですね。
食は自分にとってツールの一つ。日本人が健やかになったら、こんなにいいものを持っているのに、自分のことでいっぱいいっぱいで、
かたや隣国の人は食べ物がない、教育がない。シンプルだけど根深い問題に直面しているのに、
こんなに近くにいる私たちはのほほんとしている、と働き始めの20、21歳で思って。
―カルチャーショックを受けられた、と。
自分にできることは何かと考えた時、JICAや国連ではなく、子供達が健やかになる手助けができたらいいなと思ったんです。
日本は今、食物アレルギーも増えているし、子供の肥満も増えている。この世代で、今はじめることに意味がある、と思ったんですね。
あとは単純に手で何かを作ることが好きなので、料理家という道に進むことになりました。
―妹さんが加わったのはいつ頃ですか?
東京でお店をやっていた頃です。2008年から2009年くらい。
自分のお店を開くまでは私自身フリーランスのように活動していたので。
―スカウトのような形ではなく、自然と参加されたのですか?
そうですね、デザインの勉強を終えて帰国した妹に、気軽にどこかで働くまでの間手伝ってよ、
といったら「一緒に働く」と言ってくれて、始めることになりました。
―姉妹で役割ははっきり分かれているのですか?
私が料理を考えて、イメージを共有して言葉にするんです。
彼女はデザインを学んだので、お皿とかディテールとか、を詰めてくれます。
私がこれとこれをいれたいというと、妹はデザイン的にこの素材も足した方がいい、と言うんですが、
それは料理的にはNGだ、と言ってキャッチボールしながら一緒に考えていますね。
姉妹でお仕事は、やりやすいですか?
一緒に本を作るというのは楽しかったですよ。食というものへの、コアになる生きることと繋がっているということを、
一緒に親の仕事を見ながら学んできたし、自然の美しさが小さな形で野菜となってキッチンで見せてくれるのを
姉妹でシェアできているというのはよかったですね。
―幼いころからの風景を共に見てきた同志、ですね。
言葉のやり取りで説明できないことってあるじゃないですか。
見たことない触れたことのないものを共有するのは難しいけど、
姉妹だからこそこの『THE SOUP』という本ができた、というのはあると思います。
(つづく)
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著者プロフィール
橋本明朱花
マクロビオティックを実践している両親のもとで育ち、家では自然に囲まれながら家族と自家栽培を
行っていた。美術を学んだ後、国際協力関係の仕事に就いたことをきっかけに「食」を通した
ソーシャルツールに興味をもち、東京で飲食店を開店。東日本大震災を機に京都へ居を移し
ベジカフェ「TOSCA」をオープン。国内外からお客さんが訪れる。
橋本朋果
姉と同じく、マクロビオティックを実践している両親のもとで育ち、家では自然に囲まれながら家族と自家栽培を
行っていた。TOSCAではデザインを担当し、料理や内装の装飾などに携わる。現在はTOSCAを離れ、
食とデザインについての活動を行っている。
TOSCA
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火~日・祝前日・祝日
ランチ 11:30~15:00(L.O.14:30)
ディナー 18:00~22:00(L.O.21:00、ドリンクL.O.21:30)
電話:075-721-7779
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