―この『どうして そんなに ないてるの?』は私の1歳になる娘がとても気に入っているんです。
1日に何回も持ってくるんですよ。しゃべらないけど「ん、ん」と言って目の前に突きだすんです。
いしず:とてもうれしいです。まもなく2歳になる息子も、同じような反応をしてくれます。
この絵本の取材で、息子も同席した時には、気に入りのページを指差し、
まだ言葉にはならない声で「だあだ、だだ、だだっ」と、一生懸命説明しようとしていました。
―自分も答えないと、みたいな。発売は今年で、もうすぐ2歳を迎えられるということは、
絵本の制作はお子さんがおいくつの頃ですか?
いしず:ラフスケッチを描いたのはだいたい生後3ヶ月くらいの頃で、
それを編集の安藝さんに見ていただいた時が10ヶ月くらい。
―ラフスケッチをはじめに見られたときのご感想は?
安藝:そうですね。先ずは、とてもやさしい気持ちになりました。
いしず:自分の子にも、こういう風になってほしい。
たとえば、枯れ木にクレヨンで葉っぱを描いてあげたいとか、うさぎの雲に空を見せてあげたいとか、
そういうやさしい気持ちを持った子になってほしいという願いもあります。
『どうして そんなに ないてるの?』より
また、絵本のラフを一気に描ききった時、その勢いで最後に書いた言葉は
「世界中の赤ちゃんが無事生まれますように」でした。
安藝: 今の言葉だけ切り取ってしまうと、偽善的に聞こえてしまうかもしれないのですが、
この本の文脈の中で託されている思いを踏まえると、身にしみる言葉になってくるんですよね。
―では、絵についても伺いたいのですが、ラフの段階からお2人で相談されたのでしょうか?
安藝:その部分は表現の問題なので、基本的には作者の世界です。積み木の絵なども、
いろんな色で試して、納得のいくまで、何度も描いておられて、
いしずさんの心の奥底からでできた表現になっていると感じております。
―絵本の赤ちゃんの様子を見ていると、ハイハイの時期かな、と思うのですが、
これはお子さんが半年から10カ月くらいの時期をモデルにされているのでしょうか。
安藝:モデル選びにも工夫があります。通常、物語を作る場合、キャラクターをひとつに決め、
そのキャラクターで展開するんですけど、
この作品はページごとに微妙にキャラクターを変えていらっしゃるんですよ。
そうすることによって、いしずさんのお子さんだけではなく、
うちの孫であったり、店主のお子さんだったり、といろいろな赤ちゃんが登場してくる。
ひとつのキャラクターが動くのではなく、広い多様性、広い世界観が入っているんです。
―そうですね、改めて拝見すると、赤ちゃんの名前もないし、親の存在が出ておらず、
赤ちゃんの目線で綴られているというところも、
お子さんたちが感情移入するきっかけなのかもしれませんね。
いしず:世界中、どこの赤ちゃんもみんな同じじゃないですか。
まだ生まれたばかりで、言葉を覚えるまではそんなに差はないというか。
とにかく、みんな泣いていて。「どうしてそんなに泣いてるの?」という言葉も、世界共通の気持ちですよね。
安藝:障碍も越えてね。
(つづく)
どうして そんなに ないてるの?
作・絵/いしずまさし
刊行/えほんの杜
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著者・協力者プロフィール
いしず まさし/石津 昌嗣 1963年広島生まれ 作家/写真家/絵描き
武蔵野美術大学卒業後、グラフィックデザイナーを経て三年間海外を放浪する。旅の途中でダライ・ラマ氏を撮影(写真家として初のポートレイト)。帰国後、写真と執筆業に携わる。著書に『モメント イン ピース』(小説集/リトルモア)、週刊SPA! 連載の『東京遺跡』(写真・小説集/メディアファクトリー)、『あさやけのひみつ』(絵本/扶桑社)、他多数。最新刊は『どうして そんなに ないてるの?』(絵本/えほんの杜)。
『どうして そんなに ないてるの?』
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