子供が数人いると、趣味趣向がそろって仲良し、ということはあまりなく
常に「アクティブな子もインドアな子も楽しめる場所」を探し求めている。
この思いは本屋にも反映していて、お店のある建物は目の前が芝生で
本に飽きたこどもが外で走り回っても安心できる場所を選んだ。

どこかにでかけるときも、この「”動”と”静”のバランス」は意識する。
こどものため、というより、親のため。だってその方が親が疲れないから(笑)
「妹のために来た」「弟の趣味に付き合わされた」「姉だけが楽しんでいる」
…そんなケンカを生み出さないためにも
それぞれのための場所と時間があることを伝えられる場所は
親として大事にしていることのひとつ。
遠出をするときもそれは変わらず
「アクティブな子もインドアな子も楽しめる場所」を基準に探す。
先日行ってみた場所は、親も子供も大満足!な思い出に残る場所となった。
山形県にある田んぼに囲まれたホテル「スイデンテラス」。

となりの施設を併せてどちらの子も受け入れる体制が整っていて
ファミリーホテル三ツ星級のステキホテルだった。
ここに行こう! と思った決め手は
ホテル内に複数設置されているライブラリスペース。
こどものため、という言葉の中には、親も楽しめないとこどものためにならないという意味も含んでいる。
ライブラリスペースがあるなんて、それだけでときめく。
まだ見ぬ本に出会えるという期待は、旅先でも変わらない。
スイデンテラスにはこじんまりとしたライブラリスペースが複数あって
混雑しない設計になっている。
ひと部屋ひと部屋ジャンルが分かれているので、めぐるのが楽しいホテルだった。
いつか本を読むためだけにひとりでゆっくり泊まりに行こう。(内緒で)
ライブラリにある本は、部屋に持ち込んで読むことが許可されているため
未知の本に出会っては心躍らせ、部屋で読む候補の本をしてたくさん積んだものの
結局最初に手に取ったのは以前からの積読リストにある本
『バッタを倒しにアフリカへ』(前野ウルド浩太郎/光文社)だった。
なぜだろう。前知識のないものよりある程度知った本のほうが安心できるからだろうか。
『バッタを倒しにアフリカへ』はお店でも児童書版も取り扱っていて、なじみ深い本だった。
こどもたちも興味持つかなー、と思い冒頭を音読してみたら、
横で聞いていた夫が何度も笑いながらツッコミんでいて、気づけば夢中になって読んでた。
私も読みたかったけど、せっかくの旅行だし、夫は本屋の仕事をしている私よりも本を読む時間はないので、
読書時間をプレゼントする意味も含め、そっと譲ることにした。
読後、夫は面白かった!といってぞんぶんに魅力を語ってくれた。
普段はスマホでWeb記事やYoutubeを見ることの多い夫が読書を楽しんでくれたのも、
スイデンテラスのこの空間のおかげだな、と思う。
わたしも楽しそうに本の感想を述べる夫といる時間は楽しかった。
子供らも、怪獣図鑑やマンガや絵本をそれぞれ手にしていて
ホテルの本を楽しんでくれるだろうか? と不安だった私はほっと胸をなでおろし
「な、楽しいやろ? そうやろう?」という眼差しを注いだ。
ことばにするとうざがられるので眼差しだけにしておいた。
館内のライブラリスペースが「静」とすれば、となりにある施設が「動」を担ってくれる。
スイデンテラスのとなりには屋内施設の「ソライ」というキッズドームがあり、
地下が工作ルーム一階がアクティビティ施設になっている。
からだを動かしたい!工作もしたい!とこどもたちはおおはしゃぎ。
2日間にわたり入り浸り、工作に没頭したり、ごろごろ転がったり、
登ったり走り回ったりと大忙しのこどもたち。
大人は安全を見守りながらときどき参加する程度。
旅先でも天候に左右されず遊びまわれる場所があるというのは、
アクティブな子がいるわが家にとっては安心材料となる。
「よし、これで夜は寝てくれるぞ。」とガッツポーズをとれるのだ。
夕方以降は学童として使われるここはとても空いていて、ほぼ貸し切り状態だった。
この「ソライ」にも、さりげなく本が置かれていた。
科学や工作関連のマンガや図鑑が多く、児童書は古典がいくつか並んでいた。
少し難癖をいってしまうと、この「選書」という作業、大人向けの選書は素晴らしいと感じる施設が多いけれど
児童となると絵本や図鑑、マンガに偏りがちなのは、わたしの見てきた場所が少なすぎるというのもあるだろうが
まだまだ児童書を読んできた大人/今も読み続けている大人が、
選書業界には少ないのでは、と思ったりもする。
もっと自分が精進して、学校図書館や子育て、不登校の支援など
日々こどもと本に関する仕事をしていることを認知してもらい
児童書専門の選書を任せてもらえるようになろう。とはしゃぐこどもたちを見守りながら考える。

ホテルは温泉も居心地がよく、ほどよい広さで浴槽も深くないので、こどもたちも怖がらずに入っていた。
朝風呂を楽しめるようになったのは、成長した証だな。と感慨にふけりながら
これからどんどん、旅の楽しみは増えていくのかもしれない。
こどもが幼いと、こどもを優先にして選んでしまって親の楽しみは温泉くらい…
それすらも、室内の浴槽で済ませなきゃいけなくなることもあるなかで
この旅は本好きだったら親も羽を伸ばしてくつろげる実りあるホテルだった。
コロナ禍で行くタイミングが難しくはあるけれど本が好きな人なら
一度は訪れてみてほしい。
家族だけでなく、ひとり旅でもふたり旅でも楽しめる工夫があるホテルだった。
そして山形、お米もスイカも超(スーパー)うまかった。
旅のおみやげに、スイカを買った。
