いしず:「ほんをうえるプロジェクト」の前に、先ずは、長澤さんとの出会いでしょうか。
安藝:発売は2月13日だったんですけど、知人を通じて長澤さんに原稿をみてもらったのは去年なんですね。
長澤さんは、出版社と書店の取次であるトーハンで「ほんをうえるプロジェクト」を担当されています。
―今回、安藝さんからお話しを伺ってこのプロジェクトを初めて知りました。
植物に水をやり、ゆっくりと育てるように、本も、もっとていねいに売っていこう、
というコンセプトが素敵ですよね。
安藝:長澤さんは元々は書店で、児童書をご担当されたとお聞きしていました。
そこで、彼女に見ていただいたところ、「いいですね」と本をなでてくださった。それがとてもうれしくて。
―それは編集担当として、とてもうれしいことですね。
安藝: はい。実際に書店にいらしたご経験のある長澤さんに見ていただき、
「よし」と思ってもらえたことは、とても励みになりました。
そこから「ほんをうえるプロジェクト」推薦本として進めてくださいました。
―この『どうして そんなに ないてるの?』を読まれた時は、どのような印象だったのでしょうか。
長澤:とにかく可愛いと思って、あかちゃんが目の前にいるような。
自然とこちらがニコニコしてしまうような。それで無意識になでてしまった。
―今回、はじめて発売前から関わり、帯の制作もされたそうですが、
今までは既刊本だけを紹介されていたのでしょうか。
長澤:そうですね。基本的には既刊本の発掘ということをコンセプトとしているんですけれども、
稀に新刊時から応援させていただくこともありまして。
その場合でも、ゲラを読んでくださる書店さんを募集したりということはあったのですが、
帯の制作は今回の絵本が初めてでした。
―「ほんをうえるプロジェクト」をホームページで拝見したんですが、
特に児童書や絵本にこだわっているわけではなく、幅広く取り扱われていますね。
長澤さん自身は現在も児童書担当をなさっているのですか?
長澤:特に部門はなくて、それぞれ自分がいいなと思って企画しているので、
ボーダーレスに取り組めることができます。
ただ、やっぱり私は、書店で児童書を担当していたので、児童書を選ぶというのはありますね。
―ご経験から、というのも大きいのですね。どのくらい書店勤務をされていらしたのでしょうか。
長澤:児童書売り場自体は1年くらいですが、書店には4年ほど、おりました。
安藝: 書店やメディアに、児童書や絵本を案内する時、「大人も楽しめる絵本」
などという表現もありますが、この絵本も初めは「子育てで疲れているお母さんへ」とか、
マーケティングとして必要な言葉を考えていたんですね。
でも長澤さんは「これ絶対子どもも読みますよ」と言ってくださって。
―児童書担当をされていた方に言われると、とても心強いですね。
安藝:キャッチコピーも、長澤さんにミーティングに参加いただいて、ふと出たのが、
「おひるに おひさまを つかまえたかったから?」でした。
これは本文からの言葉ですが、タイトルに呼応して、本の内容を真正面に訴えていて、これだ!となって。
「どうしてそんなに泣いてるの?」というフレーズは、ちいさい子を見るとやっぱり思うじゃないですか。
―そうですね。こんなやさしい聞き方じゃなくて。「なんで泣いてるん!」となってしまいますが(笑)
安藝: 「ほんをうえるプロジェクト」はトーハンが運営されていますが、出版社だけではなく、
業界のボーダーを超えて、発売前から伴走してくださいました。
新刊としてのリリースから、何度もリリースを作っては配信してくださって。
長澤:注文書は、今までに4回作成し配信をしています。先ず発売前に新刊としての注文書を2回。
1度目は、本の紹介を、2度目は「ほんをうえるプロジェクト」にて制作した本のPOPを入れてのご案内でした。
3度目は、重版情報も含め、地方紙のパブリシティ予定を紹介したもの。
―注文書の内容も、少しずつ成長していったのですね。
長澤:最新のものは、英訳特典や英訳動画を配信といった情報という風に、新着情報を更新しています。
通常は全国一斉に送信してしまうんですけど、この絵本に関しては、ちゃんと本の内容をお伝えして、
反応してくださった書店に置いていただきたいという気持ちがありました。
安藝:発売から、まもなく半年になりますが、「ほんをうえるプロジェクト」という名前の通りに、
ほんとうに丁寧に育てていただいています。
―出しっぱなしじゃないところがいいですよね。
安藝:今、出版業界は厳しいと言われていて、マーケットありきで安全に売り上げを、
という後ろ向きな傾向があります。でも、きっちりと丁寧に仕事をすることで、
人から人に伝えたいことが生まれていく。
そこを長澤さんに出会い、ご一緒いただいていることはありがたいですし、
子どものように、よく育っていってほしいなと思います。
長澤:帯は、紙ではなくおくるみを想定して布のような雰囲気を出しました。
本ではなく赤ちゃんをくるんでいる。帯も含めてやさしい感じが伝わればと思います。
(つづく)
どうして そんなに ないてるの?
作・絵/いしずまさし
刊行/えほんの杜
1,200円(税・送料別) 購入はこちら
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著者・協力者プロフィール
いしず まさし/石津 昌嗣 1963年広島生まれ 作家/写真家/絵描き
武蔵野美術大学卒業後、グラフィックデザイナーを経て三年間海外を放浪する。旅の途中でダライ・ラマ氏を撮影(写真家として初のポートレイト)。帰国後、写真と執筆業に携わる。著書に『モメント イン ピース』(小説集/リトルモア)、週刊SPA! 連載の『東京遺跡』(写真・小説集/メディアファクトリー)、『あさやけのひみつ』(絵本/扶桑社)、他多数。最新刊は『どうして そんなに ないてるの?』(絵本/えほんの杜)。
『どうして そんなに ないてるの?』
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「ほんをうえるプロジェクト」
ほんとうに面白い本をベストセラーに育てていくために本の問屋・トーハンがはじめたプロジェクトです。
ほんをうえるプロジェクトメンバーが選んだとっておきの一冊をご紹介しています。