―まーちゃんの絵本紹介、いつも楽しみに見ています。
まーちゃんママ(以下ママ):ありがとうございます。
はじめはただ知人向けに遊び心で始めたもので、まさかこんなことになるとは思っていなかったんですよ。
―まーちゃんの絵本紹介を見ていると、幼い頃の思い出なども見えてきますが、どのように絵本を選んでいたのですか?
ママ:自ら選ぶようになったのは幼稚園くらいでしょうか。
なんとなくのルーティンがあって、お互いが1冊ずつ選ぶんですね。
なにがいい?って聞いて。
そこで持ってきた絵本でメンタルを見るんです。
持ってきた絵本をみて、あ、これを選んだってことは、なんかあったかな、と思うんです。
でも直接は聞かない。読みすすめながら、さり気なく聞いてみると、ちゃんと答えてくれるんです。
何に傷ついたか、悲しかったかって、ぽろっと話してくれて。
―絵本を読むことできっと背中を押されて、言葉にできなかった思いが伝えられるようになるんですね。
ママ:それに対して、アンサー絵本を用意するんです。『あすはきっと』とか。
たいがいつまんないことなんですよ。
でも彼女にとっては真剣で。それを、「それはね…」と理屈で説明するよりも
『あすはきっと』を読むほうが、効果があるんです。
『あすはきっと』(Instagramにて。書籍詳細は下記)
―ただ漠然と「どうだった?」と聞いてみても「うーん、わかんない」と答えちゃう。それよりも、絵本を選んで心の会話をするというのは、素敵ですね。
ママ:日中は仕事をしていて、夜は寝かせなくてはいけないし、じっくりと聞く時間がないんですね。
一対一で向き合って聞く時間は、せいぜい幼稚園の送り迎えのときだけで、帰宅すると家事でバタバタしてしまう。
―仕事をしていると、なかなか向き合う時間が取れないという気持ちはわかります。働くお母さん共通の悩みですよね。
ママ:だから、普段ゆっくり向き合えないことへの罪滅ぼしも含めて、
ゼロにするつもりで読んでいました。アンサーを読んだから許して、という感覚です。
たくさん聞けない分、選んでもらうことで気持ちを知る。
じゃあママはね、といって読むとすっと寝る。心のバランスですよね。
―この日は楽しかった!というときの絵本もあるのですか?
ママ:はい。これを選んだってことは楽しいんだなって思うこともある。
『素晴らしい季節』とか。その日一日楽しく過ごせた、なんでもない日などは季節ものだったりしましたね。
私の選ぶものはアンサー絵本が多かった気がします。
『すばらしい季節』表紙(詳細下記)
―一日の最後の締めくくりは、絵本を通して会話することだったんですね。
ママ:たとえば、学校とかで特に問題とかなかったとしても、
絵本を読まないとかえって不安定になっちゃうくらい(笑)
リセットのスイッチがない、というくらい大事なものになっていました。
自分も気持ち悪いんです。読まないと一日が終わらないんです。
本当に歯磨きや食事と同じ感覚でした。
―うちは、その領域まで達していないかも…(苦笑)まーちゃん親子にとっての、心の安定剤だったのですね。
ママ:毎日違う絵本じゃなくても、同じ絵本だったこともるんですよ。
ただ毎日読んでいました。だんだん意地にもなるくらい(笑)
まーちゃん:絶対だったよね。毎日。なにがあっても。
―読み聞かせの習慣はいつごろまで続けていたのですか?
まーちゃん:4年生くらいまでは一緒に読んでいました。
その頃から自分でも読み始める時間が増えていって。
そのうち大好きな、運命の本ともいえる本に出会って、自分の世界が広がっていきました。
5年生くらいからは絵本も扉を閉じたまんまになっていて。
ママ:1年生になると、児童書が増えて絵本は少しずつ減っていきました。
一緒に読むのも好きだけれど、一人で読む時間が増えましたね。
―5年生でやめて、中学1年生ではじめたということは、2年間さわっていなかった?
ママ:あるとき、こんなにあるけど手放したくないね、じゃあどうしよう?
となったときに、絵本棚の扉を開くと、思い出の扉も一緒にうわっと開いたように感じて。
まーちゃん:2年て、とても短く感じるんですけど、扉を開けたとき、
とても懐かしい友人に会ったような、すごく久しぶりな感覚になりました。
―そしてまた、大切な家族の一員として、お2人の時間を結ぶことになったのですね。
ママ:今もまた絵本に助けてもらっている感じですね。大きくなるまで毎日繰り返していたし、
今は今で視点が変わってまた違う会話ができることもあるし。
まーちゃん:この前赤ちゃん絵本で泣いちゃった。って。最近2人で泣いちゃいます。
―時を経て視点が変わるというのは読書の醍醐味ですよね。まーちゃん自身は、どんなふうに視点が変わったと感じますか?
まーちゃん:小さい頃は絵だけを楽しんでいたけど、
文章を読むとこういう話だったんだって泣いちゃったり。
今も、絵本から癒されたり励まされたりする力をもらっています。
(つづく)
今回登場した絵本
『あすはきっと』
作/ドリス・シュワーリン
絵/カレン・ガンダーシーマー
訳/木島始
出版社/童話館出版
出版年/1997年 価格/1,296円
『すばらしい季節』
作・絵/ターシャ・テューダー
訳/末盛千枝子
出版社/すえもりブックス 絶版