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―本を出すことになったきっかけはなんだったのですか?
―きっかけは、出版業界に身を置く友人から
「フランス語ができて星の王子さまが好きな人を出版社の人が探してるんだけど、どう?」
と声をかけてもらったことです。
―友人から話しをもらったとき、どうでしたか?
―話しを聞いた途端、もう興奮してしまって。
まだ本決まりではなかったのに、もう自分が本を出す気でいたような気がします(笑)
―ご自身も熱望されていたのですね。
そこまでして、やりたい!と思える魅力はなんでしょうか。
―いつか、自分の本を出したいという小学生の頃からの夢と、私の支えとなってくれた星の王子さま、
ものを書くこと、本、とすべて私の好きなことばかりで溢れていて、
もうなにがなんでもやらせてください!という感じでした。
―プライベートではなく人に伝えるために執筆する、
という経験は初めてだと思うのですが、いかがでしたか?
―最初は夢中で楽しく書いていました。
でも、自分が書きたいことと、編集者さんが描いてほしいと思うことが合わないこともあって、
その溝を埋めることが大変でした。
出版社での最終原稿チェック(写真/福本舞衣子@fukufukuu)
―まっさらな思いの福本さんと、読み手を意識した編集者さんの思いの違いですね。
―素人だからこそ言えたのだと思うのですが、思いの丈をありったけ伝えていたんですね。
それでも、見捨てることなく真摯に答えてくださって。
だからこそ、最後まで納得して書くことができたかな、と思いました。
―編集者さんが福本さんの思いを受け取った上で、返事をくれたのですね。
―そうですね。こちらの意見を汲んでくれたうえで、方向性や意図などを教えてくださったので、
私も素直に意見に耳を傾けられたのだと思います。
―今回書くうえで特に苦労したことはどんなところですか?
―この本のコンセプトは「『星の王子さま』を知らない人にその魅力を伝えること」なんです。
知り過ぎている身としては、そのバランスが難しいと感じました。あとは翻訳です。
―今回の本では物語の中から33節を選んでいますが、すべて福本さんが訳されているんですよね。
―はい。最初はなるべく原書に忠実に訳そう。でもオリジナルも大事にしよう、
と直訳にしていたら「こういった訳を求めているのではないんです」と言われて。
直訳ではなく、星の王子さまが話したように訳してみて、とアドバイスをいただきました。
―原書のイメージを壊したくないからこそ直訳にこだわっていたけどもっと柔軟に、という編集者さんからのアドバイスだったのでしょうか。
―はい。でも最初は、挑戦してもなかなか納得できなかったんです。
サン=デグジュペリの書いたものを私の見解で書くなんて!って。
でも、直訳はすでにたくさんあるので、それでは今回の本の魅力が出せない。
どうすればいいかわからず、また編集者さんに相談しました。
―星の王子さまが好きだからこそ、
作者にも敬意を払いたい、という思いが強かったのですね。
―そうですね。それと“フランス語”に対する愛も強かったので、
原書で書いていないことを日本語でさも書いているように見せるのが許せなかったんです。
それについて話したら「目の前に星の王子さまがいることを想像してみてください」と言われました。
―目の前に星の王子さまがいる、と想像して訳してみろ、ということですか。
―そうだと思います。
編集者さんも『星の王子さま』が大好きで、とても詳しくご存じだったので、なにか共鳴するものを感じて。
訳に入る前に、自分なりの「王子さま像」を作り上げる作業から入りました。
―福本さんの描く星の王子さまはどんな王子さまでしたか?
―歳は9歳ぐらいで、背丈は120cmくらい、青と緑が混ざったような目の色をしていて、
白に近いぐらい明るい金色の髪をなびかせていて、まだ声変わりをしていない子供らしいけど落ち着いた通る声で、と想像を膨らませていました。
星の王子さまだったらどう言うかな、なんて思いを巡らすといつも人生の狭間で助けてくれていたことを思い出して。再び、意欲がわいてきました。
―目の前に具体的なイメージを描いた後では、どんな変化がありましたか?
―すごくよくなりましたね、と言っていただけました。
新しい小さな星の王子さまを誕生させて本に閉じ込めたので、
開くとその星の王子さまの息を感じる本になったと思います。
私自身も納得して書けたからこそ、知人や友人に自信をもっておすすめできる本になりました。
根気強く対応してくれた編集者さんに感謝しています。
(つづく)
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著者プロフィール
福本舞衣子
家族とともに1歳でフランスに渡り、計約10年間、幼少期と10代をパリで過ごす。高校時代は、地元フランスの進学校のL文系へ進み、
フランス文学や詩について学ぶ。日本の大学でもフランス語を専攻。現在は日本在住。
著書に『星の王子さまが話してくれた世界一幸せになれる33の言葉』がある。
Instagram @fukufukuu