第一回 絵本作家になる前は絵を描いていなかった!?

これは、だれかな? 『おかお みせて』ほしぶどう/作(福音館書店)

 

―こんにちは!親子絵本専門店NanuKのえのもとです。本日はよろしくお願いいたします。

はい、よろしくお願いします。

 

―ほしぶどうさんは、今回が絵本作家デビューということですが、プロフィールを拝見していると、絵を描くほかにDJやイベントプランナーをされていて、幅広く活躍されていますね。

今は絵を描く仕事もしていますが、僕はもともと、イベント企画を行っていたんです。もう15年くらいになります。はじめは音楽関連のイベントで、ライブのブッキングなどを担当していました。

 

―ご自身の運営されている浅草橋にある「天才算数塾」というところでされていたのですか?

はい、「天才算数塾」はレンタルスペースとしても使っていただけるので、そこを使ってDJとかやっていたんですけど、徐々に美術の展覧会とか、映画の上映会企画をやるなど、広がりが生まれて行きました。

 

―企画を運営する立場から、絵を描くことになったのはいつ頃ですか?

絵を始めたのは、2011年に「美術手帖」という美術専門の雑誌を刊行している美術出版社さんから、展示のお誘いをいただいたことがきっかけでした。

 

―急に展示のお話しがあったのですか?

たまたま「美術手帖」の編集者さんと僕の友人が仲良くて、今度神保町でギャラリーを始めるから誰か推薦者を、という話しになった時に僕の名前が挙がりました。

 

―大胆な提案ですね!

企画はやったことあるけれど、展示はやったことがない、ということを伝えたのですが、「それで良い」という返事をいただき、やることにしました。

 

―美術手帖のギャラリー(BT gallery)の最初の展示がほしぶどうさんにとっての出発点でもあったのですね。

 どんな展示内容だったのですか?

当時は地震があったこともあって、相撲はどうかな、と思いました。

四股(しこ)を踏むという行為には地震を清めるという意味があるんです。

僕が金太郎の格好をして、そこで相撲をやりたいと言ったら…

当時の編集長から会社だから相撲やるなって言われて(笑) 結局、腕相撲になりました。

 

―なるほど(笑) 四股、踏む必要なくなってしまいましたね。

一応踏むには踏むんですけど(笑) 金太郎の格好をして、腕相撲を取る。

個展の名前は「スーパーくいしんぼう展」という名前になりました。

 

―どちらかというと、展示よりはパフォーマンスでしょうか。

そうですね。

お客さんが食べ物を持ってきたものを食べて太っていくっていうものです。

基本的に金太郎の格好で歩くので、Twitterでも話題になりました。

「金太郎 ぷりぷり」で検索すると、今も色々出てくると思います(笑)

 

―パフォーマンス一本だったのですか?

いえ、ただお客さんを待っているだけじゃ時間が空くので、合間に絵を描いて壁に展示していました。その絵がたまたま「美術手帖」の2012年2月号で、劇団チェルフィッチュの岡田利規さんの小説とコラボレーションすることになりまして。

それがいわばイラストレーターとしてのデビュー、という形になります。

 

―そこから、絵を描くという仕事の依頼も増えてきたのですか?

「美術手帖」に掲載されたことがきっかけで、絵のオファーも増えてきました。

あるとき、個展にもきてくれたデザイナーの佐々木暁さんから

「河出書房新社から出ている「文藝」という文芸誌が今度リニューアルするから、絵を頼みたい」と話があって。

季刊誌なのですが、今も継続して表紙と扉絵を描いています。

 

 

―いつ頃からでしょうか。『おかお みせて』のテイストのような感じでしょうか。

『おかお みせて』 のテイストとは全然違います。

「文藝」は2015年から担当しています。季刊誌で1年分を描いたときに春夏秋冬で絵がまとまったので原画展を3カ所でやろう、ということになりました。

 

―3カ所というのは、具体的にどちらですか?

京都の書店、誠光社と、私の主宰する天才算数塾と、荻窪の書店Titleです。

それぞれ線画と切り絵とドローイングの展示を行いました。

 

―3カ所すべてで違う展示を行ったということでしょうか。

はい、線画は誠光社で、切り絵は算数塾、ドローイングがTitleでした。

算数塾での展示のときにイラストレーターの方が展示を見に来てくださって。

「絵の仕事くるんじゃないの?」と訊かれたんですが、ほかにもいろんな仕事をしていたので、絵描きとして認知されていないんですよねー、なんて話していて。

 

そこから、ブックデザイナーとか装丁家の事務所に回り始めるようになりました。

 

―ほしぶどうさんが自ら絵を見てもらいに回ったのですか?

はい、初めて自分の絵を見てもらう、という営業をやりました。

「絵を見てください」と「展示を見に来てください」と伝えて。

 

―反応はいかがでしたか?

デザイン事務所へアポイントメントを取ると、大御所の人まで会えることがあるんです。15分でも30分でも。

営業の合間には、展覧会を見に行って。

 

―精力的に活動されていたのですね。

合間に訪れた場所には、銀座の森岡書店もありました。たまたま行ったときにいらっしゃったのが福音館書店の編集さんと、イラストレーターの小池アミイゴさんだったんです。小池アミイゴさんが森岡書店で絵本『とうだい』(福音館書店刊)の展示をやるから、ということで打ち合わせをされていたんです。

 

『とうだい』斉藤倫/作 小池アミイゴ/絵(福音館書店刊)
『とうだい』斉藤倫/作 小池アミイゴ/絵(福音館書店刊)

 

―どちらも初対面だったのですか?

小池さんとは以前DJで共演していたこともあって、自分の絵をその場で見てくれて。福音館書店の編集者さんに「いいですよ」と紹介してくれたんです。

「今度Titleで展示をするので見に来てください」と言ったら、本当に来てくれて、絵を気に入ってくれました。

 

―Titleの展示というのは、「文藝」の原画展ですね。ドローイングの。

はい。荻窪に足を運んでくれて、絵をみて「赤ちゃん向けの絵本をやりませんか」って話をいただいて。

そこから、じっくり制作して、何度も会議をおこなって、絵本を出すことができました。

 

(つづく)

★おまけ★

ほしぶどうさんの、すがおみせて!

少しずつ、みえてくるよ! おたのしみに!

 

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