―今回、いただいた資料を拝見したなかに、
奥様の仕事が忙しいので最初から育児をされていた、とありましたが。
いしず:自分も妻も、育児をしたくて、子どもの取り合いになるんです。
ただ、自分の方が時間に余裕がある仕事だったので、一緒に過ごす時間が多くなりました。
―仕事をしながら一緒に過ごせるというのはいいですね。
いしず:そうですが、打ち合わせに行くとか、写真を撮るときも、だっこひもで連れて行くしかない。
彼らは3時間に1回おなかがすいて泣き、眠くて泣く。夜はこちらも昼間の疲れで眠くなる。
でも、相手はおかまいなしに、ぎゃあぎゃあ泣きはじめる。あやして寝つくものでもないし、
こっちは眠くてイライラする。
「だっこひもで うちあわせ」写真提供/石津昌嗣
―乳児期は、特に夜泣きに悩まされる親御さんは多いですよね。一番つらい時期かとお察しいたします。
いしず:泣きやませる方法はあるんですが、かなりの体力を使ってしまう。
しかも、なれてくると効き目がなくなってくる。そうするうちに泣き声が大きくなり、
まだ言葉が分からない相手に、「うるさい!」と怒鳴りそうになる。そこを、ぐっとこらえて。
―素晴らしいですね。私は、すでに何度か口にしてしまい、自己嫌悪になることもありました…
いしず:その時、彼の目を見たんです。それが、とてもきれいで。彼はこのきれいな目で、
いったい何を見ているのだろうと思ったら、急にこちらも涙が出てきまして。
ああ、そうか。彼がいま目にしているものは、どれもはじめて見るものなんだと。
それからは、泣き声すらも愛しく思えるようになりました。
―このことをきっかけに育児の姿勢は変わりましたか? それでもうるさいと思うことがありましたか?
いしず:むしろずっといっしょにいて、見ていられたらと思うようになりましたね。
―では、アイデアが生まれたのは夜泣きもある時期なので、お子さんの月齢が小さい頃でしょうか?
いしず:はい。乳児期の3カ月頃からラフスケッチを描いていました。
―それではお子さまもそばにいながら制作を?
いしず:そうですね。実際に目の前にモデルがいるので。
とがったくちばしみたいな口はこの距離じゃないと見えないとか、
首がようやく座りかけの頃、お座りした時の横から見た姿がかわいいとか、しもぶくれの横顔とかね。
―片手で体を支えている様子や、このぷくぷくした頬がかわいくて、リアルですよね。
いしず:そうですね。デフォルメの中にもリアルがないと。
あと絵を描いていて、何枚か原画をだめにされましたね。
「あれ、なんか持ってる」と思ったら、描きかけの原画だったり、よだれだらけにされたり。
―聞いて分かってもらえる時期ではないですものね。
親子の共同作業で絵本が作られていったのですね。
(つづく)
どうして そんなに ないてるの?
作・絵/いしずまさし
刊行/えほんの杜
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著者・協力者プロフィール
いしず まさし/石津 昌嗣 1963年広島生まれ 作家/写真家/絵描き
武蔵野美術大学卒業後、グラフィックデザイナーを経て三年間海外を放浪する。旅の途中でダライ・ラマ氏を撮影(写真家として初のポートレイト)。帰国後、写真と執筆業に携わる。著書に『モメント イン ピース』(小説集/リトルモア)、週刊SPA! 連載の『東京遺跡』(写真・小説集/メディアファクトリー)、『あさやけのひみつ』(絵本/扶桑社)、他多数。最新刊は『どうして そんなに ないてるの?』(絵本/えほんの杜)。
『どうして そんなに ないてるの?』
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