シリーズに『ガスパール こいをする(Gaspard est amoureux)』というお話があります。
てっきりリサに恋をするのかと思っていたら違う女の子が出てきます。それでリサが嫉妬してしまうお話です。
絵本ながら恋する気持ちがよく伝わってきます。タイトルにある“ガスパール”ではなくリサの方にスポットが当たった内容でした。
『リサ しっとをする』というタイトルの方がしっくりくるぐらい!でもすでに『La jalousie de Gaspard(直訳:ガスパールの嫉妬)』というタイトルのお話がありますからね。
日本語版では『リサとガスパールのローラーブレード』というタイトルになっていますが。
あえてガスパールにスポットをあてたタイトルにしたことにより、どうなるのか最後までワクワクすると思うので、そのタイトルセンスには敬服です。
連載第3回目の『あるばん、あるねこ…』のご紹介のときに、フランスの絵本は恋愛のお話もよくあると書きました。
今回、リサとガスパールの恋のお話は子供のかわいい“好き”の気持ちというよりは、「リサ、あなたもう立派に“女”ね!」と言いたくなるような内容。
嫉妬にかられたリサはどんな行動をしたのでしょう。
フランスでは小さい頃から恋愛にオープンという話で思い出したのですが、私がパリに住んでいた幼稚園生の頃、クラスで好きな子(異性)を1人ずつ発表していってカップルになって過ごすということがありました。
子供たちだけでの遊びではなく、もちろん先生が提案したことです。
なぜそんなことがあったのかというと、その日がある行事の日だったからです。
フランスでは1月6日にGalette des Rois(ガレット・デ・ロワ)という行事があり、これは公現祭の日に食べる伝統菓子の名前でもあります。
パイのようなケーキなのですが、その中にフェーヴ(fève)という陶製の小さな人形が1つ入っていて、パイケーキを切り分けてみんなで食べ、
中にフェーヴが入っていた当たりの人が紙の王冠(ほとんどのガレット・デ・ロワについてくる)をかぶって王様・王女様になり、幸福が訪れると言われています。
(ガレット・デ・ロワ/Instagram@fuku.fukuu)
そのガレット・デ・ロワを私の通っていた幼稚園でもやっていたのですが、1人1切れずつガレット・デ・ロワがくばられ、全部のパイにフェーヴが入れられていたので、みんなが王様や王女様になりました。
そこで先生が王様と王女様で1組ずつペアになって遊びなさいと提案したのでした。1人ずつ席の順番にペアになりたい好きな子を選んでいきました。
私がその頃気になっていたポールは人気者ですぐに他の女の子に選ばれてしまいました!有り難いことにその後、違う男の子が私のことを選んでくれたのでその子と2人で過ごしました。
今考えると誰にも選ばれなくて最後に残ったりしたらちょっと悲しいですよね。他の子がどうだったかまではあまり覚えていませんが、みんなとくに問題なくそれぞれペアになって遊んでいた気がします。
日本でも何かするために「ペアになってー!」というのはよくありますよね。でも大概同性同士の仲の良い子と組みますよね。
あまり仲の良い子がいなかったり、引っ込み思案の子には恐怖の時間でもあります。ましてや好きな子(異性)を発表しましょう!なんてなかなか日本ではないのでは…幼稚園生ぐらいだとあるのでしょうか?
(リサとガスパールタウンのカフェ CAFE BRIOCHE)
さて、リサとガスパールはこのお話で最後にはどうなるのでしょう。この恋の行方は?
『ガスパール こいをする』、フランス語版と日本語版では表紙イラストの色合いの濃さと絵の切り取り方が違うのも興味深いのですが、
人間味(?)溢れるリサの細やかな心情が伝わってくる1冊でした。
(つづく)
著者プロフィール
福本舞衣子
家族とともに1歳でフランスに渡り、計約10年間、幼少期と10代をパリで過ごす。高校時代は、地元フランスの進学校のL文系へ進み、
フランス文学や詩について学ぶ。日本の大学でもフランス語を専攻。現在は日本在住。
著書に『星の王子さまが話してくれた世界一幸せになれる33の言葉』がある。